ベストセラーで読むアメリカ

2016年10月28日

»著者プロフィール

■今回の一冊■
KILLING THE RISING SUN
筆者 Bill O'Reily, Martin Dugard
出版社 Henry Holt

『KILLING THE RISING SUN』(Bill O'Reily, Martin Dugard ,Henry Holt)

 太平洋戦争で日本軍がアジアで行った非人道的な行為などを盛り込んだ歴史ノンフィクションが今、アメリカで大ベストセラーとなっている。その主張は明快だ。多大な犠牲を生んでいた戦争を終わらせるには、広島・長崎に原爆を投下したことはやむを得なかった。原爆投下を決めたアメリカのトルーマン大統領の決断は正しかった――というものだ。おまけに、カーターや父ブッシュら元大統領から原爆投下に関する意見を書簡で寄せてもらい、その手紙も巻末に掲載している。日本人としてはとても気になる本だ。

 ニューヨーク・タイムズのベストセラーリスト(単行本ノンフィクション部門)では10月2日付でトップで初登場し、ランクイン5週目となる直近10月30日付でもトップの座にいる。今年はオバマ大統領が現職の大統領として初めて被爆地・広島を訪れた。日本人にとっては特別な思いを抱かせる出来事だった。しかし、大統領の本国アメリカでは原爆投下は正しかったと論じる歴史書が売れているのだ。

 しかも、原爆投下を正当化するため、日本がいかにひどいことをしたかを克明に書く。一般のアメリカ人が読むと反日感情を抱くだろう。日本は原爆の被害者である前に、アジアの人々に多大な犠牲をもたらし、アメリカ兵を殺した加害者だというとらえ方だ。原爆を投下された被害者という立場からだけ訴えても、なかなかアメリカ人には原爆の悲惨さを受け入れてもらえないということなのだろうか。

「残虐な日本軍を止めるには原爆投下はしかたなかった」

 筆者のビル・オライリーは「オライリー・ファクター」というテレビのニュース番組の司会者を務め、保守派の論客として人気を博する人物だ。本書のタイトルKILLING THE RISING SUN のRISING SUNとはもちろん「日いづる国」からとったもので日本を指す。日本をKILLINGとは穏やかな表現ではないと思われるかもしれない。しかし、筆者はすでにKILLING LINCOLN、KILLING KENNEDYなどのベストセラーを相次ぎ上梓している。本書はこのKILLINGシリーズの第6作目となる。

関連記事

新着記事

»もっと見る