海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年5月31日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは、「オバマ広島訪問と非言語コミュニケーション」です。現職米大統領として初めて広島を訪問したオバマ米大統領と被爆者との対話は、多くの日本人に深い感動を与えました。同大統領が被爆者の話を傾聴し言葉を交わす際に見せた動作、表情及び視線などの非言語コミュニケーションが大きな役割を果たしています。そこで本稿では、広島平和記念公園での同大統領の非言語コミュニケーションとそれに含まれたメッセージを分析します。

坪井直氏とのエピソード

オバマ大統領と対面した坪井直氏(代表撮影/AP/アフロ )

 広島平和記念公園で式典が開催される当日の午前、坪井直日本原水爆被害者団体協議会(被団協)代表が、元安川沿いの道をつえをついて歩いていました。

 「今日、オバマ大統領に面会したら何を伝えたいですか」

 筆者が質問をすると、坪井氏は率直に語ってくれました。

 「まず広島を訪問してくれてありがとうと言います。感謝します。広島に来て、見たり聴いたりして全体像が分かると伝えます。これから核のない世界に向かって一緒に頑張りましょうと呼び掛けます」

 坪井氏はこう答えると、「3点です」と言って締めくくりました。同氏の言葉には、かなり力がありました。

 ところが、そう語った後で数秒歩くと、坪井氏は突然立ち止まってしまったのです。息が苦しそうな様子でした。付き添いの女性が、心配そうにこう尋ねていました。

 「先生、心臓が苦しいですか。ニトロを飲みますか」

 「いや、このぐらいなら大丈夫」

 そう返事をしていました。坪井氏は、ストローを使って容器に入った飲料水を飲むと再び歩き始めたのです。

 筆者の質問に回答したために体調不良を起こし、オバマ大統領との面会が実現しなくなってしまったらと思うと逆に胸が痛みました。そこで、広島レストハウスと元安橋の角に止まっているタクシーに乗るまで坪井氏を見送りました。助手席の後ろに座った同氏に「何歳になられましたか」と尋ねると、「91歳です」と力強く答えてくれたので、筆者は安堵し、思わず両手で握手をしてしまったのです。

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