WEDGE REPORT

2016年11月7日

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 東日本大震災以降、災害時に備えてBCP(事業継続計画)を作成する企業が増えた。しかし、作成した計画をいかに活用するかが肝要であり、実効性なき計画は絵に描いた餅でしかない。想定外の危機に見舞われたとき、危機管理に強い先進企業はどんな「備え」を行っていたのか。熊本地震などを乗り切った事例から事業継続計画のポイントを探る。

 4月の熊本地震で被災し、操業を停止していたソニーの半導体工場(熊本県菊陽町)が7月末に生産を再開した。この工場はスマートフォンのカメラなどに使われるイメージセンサーの量産拠点だ。ソニーにとっては、虎の子とも言えるデバイスを製造する心臓部である。

熊本地震直後のソニー熊本工場内の様子(写真・SONY CORPORATION)

 10月初旬に復旧した工場を報道関係者に公開した際、熊本工場を運営する生産子会社・ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの上田康弘社長は「(被災後)最初にクリーンルームに足を踏み入れた時は熊本撤退も頭をよぎるほどだった。事前にBCP(事業継続計画)を作り、訓練してはいても、実際の被災現場を見た時に足がすくんだ」と、振り返った。

 有事の際に企業が損害を最小限に抑え、事業の継続や復旧を図るための計画を「事業継続計画(BCP、Business Continuity Planning)」という。今回、役立ったのもこれだ。震災直後の「4月末という早い段階で、山形や長崎の自社工場に生産を移管する方向性を決め、その後移管した」(鈴木裕巳熊本TEC長)ことに加えて、富士通にも代替生産をさせていたと見られる。「個別案件には答えられないが、半導体については東日本大震災以降、『何かあったら助け合おう』というスタンスで可能な限り他社にもご協力はしてきた」(富士通広報)という。

 こうした結果を受けて、一部でも報じられているように、東芝、ルネサスエレクトロニクスなど半導体を手がけるメーカー各社も災害によって半導体工場が被害を受けた際に、必要な資材や部品をお互いに融通する体制作りに乗り出している。

 事業継続計画を総合的に評価し、「BCM(Management)格付」に取り組む日本政策投資銀行の蛭間芳樹氏は「平時には競合関係にある企業同士も、災害時は助け合う業界共助の仕組み、お互い様の産業文化的な価値観は、日本が世界に誇る民間の災害レジリエンス(復元力)の一つの戦略だ」と語る。

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