中国の海洋進出を防ぐため米国は横須賀を手放さない
ただし、トランプが言及する「在日米軍撤退」は0か100かの議論ではない。米国の国益の観点から完全撤退はありえない。
米国にとって地政学上重要な海域は、太平洋からインド洋、中東へと続くシーレーンだ。特に太平洋の西端を押さえないと、太平洋の西半分が中国のものになる。
中国が自由に太平洋へ進出するようになれば、米国本土が潜水艦発射弾道ミサイルの危機にさらされるため、米第7艦隊を中心に監視活動を強化している。艦隊の母港でもある横須賀海軍基地は、地政学的要因からも、良質なドックで有能な日本の整備員によるメンテナンスを受けられることからも絶対手放したくないはずだ。
なお、共和党のある有力議員は、米シンクタンクの提言に賛成し、本来、東太平洋に展開する第3艦隊を西太平洋に展開させ、両艦隊で護衛艦を相互運用しながら、中国の海洋進出を阻止する構想を描いている。そうすれば第7艦隊の原子力空母ロナルド・レーガンのメンテナンスによる半年間の空白期間がなくなる。そうなると、第3艦隊も横須賀に入る可能性もあり、横須賀の価値は高まるはずだ。
さらには台湾有事に備えて、在沖海兵隊は沖縄からの完全撤退は考えにくい。また、極東最大の米空軍基地である沖縄の嘉手納はなおさら撤退しづらい。仮にトランプが在日米軍撤退を命じたとしても米議会の反対にあい最悪の場合でも有事駐留となるだろう。
こうした米国からみた在日米軍基地の価値を見極め、米軍の抑止力を補完するかたちで自衛力を強化するべきだ。
Wedge7月号では、Wedge7月号では、「知られざるトランプ」と題して、余り日本では知られていないドナルド・トランプの素顔をさまざまな角度から検証しました。
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・世界はトランプをどう見ているか
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