WEDGE REPORT

2016年11月10日

»著者プロフィール
閉じる

川上高司 (かわかみ・たかし)

拓殖大学海外事情研究所長

1955年、熊本県生まれ。大阪大学博士。フレッチャースクール外交政策分析研究所研究員、世界平和研究所研究員、RAND研究所客員研究員、防衛庁(当時)防衛研究所主任研究官、北陸大学法学部教授等を経て現職。

 ドナルド・トランプが唱える日本の安全保障タダ乗り論は、日本に向けた一種のディール(取引き)であり、慌てる必要はない。むしろ、彼の在日米軍撤退発言を機に、日本の安全保障を米国に依存して経済成長に専念してきた「吉田ドクトリン」を白紙ベースで考え直し、自主防衛を強める良い機会だと捉えるべきである。

F-35ALightning、防衛省が計42機調達予定の次期主力戦闘機(写真・ALEX R.LLOYD/U.S. AIR FORCE)

 自主防衛を強化すると、現在GDP比1%の防衛予算を少なくとも2~3%にしなければ対中抑止は困難だと思われる。(*2015年ストックホルム国際平和研究所が発表したGDP比では米国3・3%、中国1・9%)。

 そもそも、トランプ次期大統領の発言にかかわらず、在日米軍の縮小とそれに伴う日本の自主防衛の強化は既定路線であり、不可逆的な流れである。

 財政赤字が深刻な米国は、オバマ大統領が「米国は世界の警察官ではない」と表明したように、国防予算も13年から10年間で約5000億ドルの削減を行っている最中だ。またそれに従って14年のQDR(4年ごとの米国防計画の見直し)でも、米軍の前方展開兵力の削減が示された。ロードマップに基づく一連の在日米軍の再編事業でも、在沖海兵隊の大部分がグアムに移転する計画である。

 一方、日本も在日米軍の縮小や中国の海洋進出に備え、14年度から「中期防衛力整備計画」(5年ごとの防衛計画)に沿って、南西地域の島嶼部における防衛態勢の強化に着手している。オスプレイや第5世代ステルス戦闘機F-35Aの配備もその一環である。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る