2024年4月19日(金)

風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2010年3月18日

 密着レポート第17回でご紹介した年中児クラスの「ラグビー」のときは、根幹となるルール(どうやったら得点が入って、どういう状態になれば「勝ち」なのか)は予め先生から伝えられるが、リレーはすべて子どもたちが考える。

 その結果、このエピソードにあるような独特(?)のリレーが行われ、そのユニークさに担任の先生も思わず吹き出しそうになってしまったというわけだ。「どうなれば勝ちなのか」が共通ルールになっていないため、自分が勝者だと信じて疑わない子どもたち。さて、このカリキュラムはここからが本番だ。

「ルール」がなぜ存在するのか。子どもたちはリレーを通じてその本質を学んでいく

 ここで「リレー」に込められた教育意図の答えを明かすと、この活動目的は子どもたちに「ルールづくり」を経験させることにある。「ルールづくり」といっても、ただ「決まりごと」とか「やってはいけないこと」を決めることではない。「ルールは、自分たちのために自分たちでつくる」という経験をさせることなのである。

 「ルールというのは、決して自分を縛るものではなく、社会生活を円滑に進め、かつ楽しむために自分たちでつくるというのが本来の姿です。幼児期の生活の中で、この原体験をさせることは大切だと考えています」(天野園長)

 このルール本来の姿を知らないと、ルールとは「自分の行動を制約する鬱陶しいもの」「堅苦しいもの」と捉えてしまいやすいが、それは本質ではない。中には、責任逃れや思いつきでつくられたルールや、現実にそぐわないルールが存在することは確かだが、多くのルールには意味がある。

 自分たちのために、自分たちでルールをつくる。この大切なことを幼稚園の年長児に原体験として教えてやりたい。この内容を体で感じながら子どもたちが学べる教材は何か。こんな深い思索の結果、風の谷幼稚園では「リレー」が格好の教材と判断し、この意図をもって教育に当たっている。そして、この原体験は小学校、中学校と成長していく過程で、そして社会人となった後の社会生活で必ず役立つ。こんな思いを込めて、先生たちの指導にも熱が入るのである。

ルールがあるから楽しくなる!

 さて、実際にはどのようにルールは決まっていくのだろうか。再び学級通信を見てみよう。

「終わったのかな・・・?」と子どもたちの所へ戻り、「で、どこが1位だったの?」と聞くと「ハーイ!」と何人もの手が挙がります。“自分たちが1位”と信じて疑わない子どもたち。手を挙げる他の班の仲間を見て「えっ?」「あれ?」「なんで?」と不思議そうな顔をしています。
「あらら? 1位がいっぱいだけど・・・」と困った様子の私に、「4班が一番速く走り終わったよ」と貴良くん、七海ちゃん、健くん。
「最後、悠翔くんは、“終わりのはずなのに、仲間が行けって言うから走っちゃった”て言って走ってきたんだけど、みんな何回走ったの?」と言うと「1回」「2回」「?・・・わかんない」とバラバラ。
そんな中、すでに人数調整を行っていたのは4班でした。「うちは2人お休み(康平くん、美佑ちゃん)だから3人が2回走って終わりにしたんだよ」と主張する4班。
「どういうこと?」と他の班の子どもたちにもわかるように説明してもらいました。


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