前向きに読み解く経済の裏側

2016年11月21日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 マスコミで為替予測を語る人は多いですが、彼らの予測は当たるのでしょうか? その結果、彼らは金持ちになっているのでしょうか? 実は、それほど当たっておらず、確率5割程度ではないかと言われています(笑)。

 為替レートは、極めて複雑な要因で動きますので、予想するのは大変です。何より大変なのは、「皆がドル高だと思うとドル買い注文が増えて実際にドル高になる」ということです。つまり、皆がドル高だと思うか否かを予想する必要があるわけです。それは、ほとんど不可能でしょう。

 そもそも、今のドルが100円なのは、プロの半分が「100円より安くなりそうだ」と考えて売り注文を出し、残り半分のプロが「100円より高くなりそうだ」と考えて買い注文を出しているからなのです。「そんな筈は無い」と思う人は、「多くのプロがドル高を予想しているならば、何が起きるだろう?」と考えてみて下さい。皆がドル買い注文を出すので、今既にドル高になっているはずなのです。

 プロの予想が半々に分かれている時に為替レートを予測しても、それほど当たるはずはありません。中には天才的な人もいるかも知れませんし、たとえばドル高バブルが崩壊した局面ではドル安予想が高い確率で当たるのかもしれませんが、そうした例外を除けば、マスコミで述べられる予想も確率5割と考えて良いでしょう。

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それでもプロの予想を聞くのは責任転嫁

 それでも、プロの予想がマスコミで流されているということは、聞いている人が多いのでしょう。プロの予想だから当たるのだろうと信じて聞いている人もいるでしょうが、責任転嫁のために聞いている人も少なくないはずです。

 たとえば、輸出企業の経理部の若手社員が上司から「輸出代金のドルが入金したのだが、今日売ろうか1カ月待ってから売ろうか?」と相談されたとします。若手社員の予想は5割の確率でしか当たらないので、自分の予想を答えるのは危険過ぎます。そういう時には、「メインバンクの為替部長がドル高を予想していますから、売るのは待ちましょう」と答えれば良いのです。

 大学の財務部長が大学の資金を運用する場合にも、自分で運用すると、成功した時に褒められるよりも失敗した時に非難される方が怖いので、プロに運用を丸投げする場合が多いようです。プロの為替予想が当たらないのですから、プロの運用が儲かるという訳ではないのですが、財務部長の責任回避には大いに役立つのです。

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