前向きに読み解く経済の裏側

2016年10月24日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 普通の会社は、赤字が続いて債務超過になったら倒産します。資産を全部売っても借金が返せないわけですから、債権者たちが我先に借金の返済を求めて来て、立ち行かなくなるからです。しかし、債務超過でも潰れるとは限りません。銀行が返済を求めて来ない場合もあるからです。では、銀行はどうして返済を求めないのでしょうか。今回は、銀行の行動について考えてみましょう。

借金があっても請求されなければ潰れない

iStock

 会社が倒産するか否かは、資金繰りの問題ですから、黒字の会社でも倒産する場合もあります。たとえば販売代金が売掛金となっていて、仕入れが現金だとすると、売り上げが伸びるほど仕入れも増えて、手元の現金が減って行くので、借金の返済期限に資金ショートを起こす可能性が出てくるわけです。

 反対に、赤字続きの会社でも、販売代金が現金で仕入れが買掛金だと、資金繰りに困ることがないので、倒産しないかもしれません。しかし、普通は赤字が続いて債務超過になった会社が仕入れ代金を買掛金にすることは難しいでしょう。売り手が心配して現金払いを要求してくるからです。

 銀行も、通常ならば、赤字続きで債務超過寸前の会社に融資をすることは考えにくいでしょう。しかし、そこには大きな例外があります。既に銀行から借りている企業の借り換え(プラス金利分の上乗せ)については、銀行の審査が非常に甘い場合が多いのです。

借り手の清算は銀行にとって大損

 銀行が借り手から「債務超過に転落しそうだ」、「転落した」、といった連絡を受けた時、銀行員が最初に考えることは3つです。「一時的な苦境にあるだけで、将来的には立ち直る会社か?」「融資の期限に無理に回収しようとして倒産した場合の回収見込み額」「融資の期限に返済を待った場合(又は再度の貸出を行なった場合)の予想される回収額」です。融資の返済を待つのか返済を受けて同額を貸し出すのかは、銀行員や監督官庁にとっては大きな問題ですが、ここでは区別せず、返済を待つことにしましょう。

 借り手が一時的な困難に陥っているだけで、将来は黒字になり、貸出金も全額回収できる見込みなのであれば、融資の返済を待つ場合が多いでしょう。ただ、実際には将来回復することが確信できるケースは稀ですが。

 無理に回収した場合、借り手は倒産し、清算されることになります。保有している資産が競売されることになり、まだ使える工場設備が二束三文でスクラップ用に買い叩かれたりしますので、銀行の回収額は相当少なくなるかもしれません。では、回収を待った場合はどうでしょうか。赤字が続いて結局倒産してしまえば、回収額はゼロになってしまうのでしょうか。そうではありません。

 たとえば100万円を銀行から借りて機械を買った会社があり、債務超過直前で、しかも毎年1万円の赤字だとします。機械の減価償却は10万円を10年間行うとします。毎年の減価償却が10万円あるのに赤字が1万円だということは、減価償却がなければ9万円の黒字だということになります。乱暴に言えば、「材料費より9万円高く製品が売れるけれども、機械が毎年10万円分ずつ擦り減っていることを考えるので、決算は1万円の赤字となっている」ということなのです。

 減価償却は、決算の赤字黒字には関係ありますが、企業の資金繰りには関係が無いので、借り手の資金繰りは毎年9万円の黒字だということになるのです。つまり、銀行は毎年9万円の返済を10年間受け続けることが出来るので、90万円の回収が可能なのです。これは、直ちに回収した場合の回収額より多い可能性があるのです。

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