WEDGE REPORT

2016年12月8日

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風樹茂 (かざき・しげる)

作家、国際コンサルタント

作家、国際コンサルタント(kazakishigeru@gmail.com)。1956年、北海道生まれ。東京外国語大学スペイン語学科卒業。メキシコ留学後、中南米の専門商社を経て、南米アマゾンの奥地でODAプロジェクトの鉄道建設にかかわる。その後は、シンクタンク、研究所勤務などで、首相向けの政策提言、ODA援助、海外投資、NGOプロジェクトに従事。イスラム開発銀行のコンサルタントも経験し、30数カ国を踏査。石油関連事業でカタール、ベネズエラに駐在。

 昨年の同時多発テロの事件現場を何度も訪れた。なぜカンボジアレストラン(le petit cambodge)が標的になったのか不思議だったからだ。

同時多発テロから2カ月の現場

 羽田発パリ行きのエールフランス便はシャルル・ドゴール空港に早朝に着く。予約している乗合バスでホテルを目指す。冬のパリの朝は8時を過ぎても薄暗い。北緯48度と北海道よりも地球の上にあるせいだ。店もほとんどが閉まっている。まるでフランスのオルランド大統領のいうように「戦争前夜」のように暗い。映画『 ブリッジ・オブ・スパイ』を思わせる。映画は冷戦開始の時期を舞台にしているが、今の時代は、ヨーロッパの混乱、中東紛争、アメリカの孤立主義、アジアでの新たな大国の勃興、今の日米同盟に値する日英同盟(日本は嫌々軍艦を地中海に送ることになった)など、むしろ第一次世界大戦前夜と酷似しているところがある。

 今回のホテルはパリ10区、テロの標的となったカンボジアレストランまで薄暗い路地を歩いて5分の距離だ。氷雨の中、11人が犠牲になったレストランを目指す。味、価格ともにリーゾナブルな人気レストランだったようだ。

 報道では、賑やかな繁華街とあったように思うが、全く違う。路地の奥にある人気ラーメン屋という雰囲気である。夜にも足を向けてみたが、テロの影響もあるのだろうが、周囲は暗く人通りも少ない。向かいがカフェ「カリヨン(Le Carillon)」である。客がなかでコーヒーを飲んでいる。早朝には気付かなかったが、このカリオンもテロリストの銃弾に15人が犠牲になっている。一方カンボジアレストランは、銃弾を受けたであろうガラス窓は白く塗りたくられ、閉まったままだ。

襲撃されたカンボジアレストラン

 不思議だ。テロリストは、なぜ、高級レストランを選ばずに、こんな店を標的に選んだのか? 人気とはいえ、この店は一見さんが訪れるような店とは思えない。カリヨンだとて襲われる特別な理由は不明だ。心地よいジャズがかかる店だったらしいが。

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