前向きに読み解く経済の裏側

2016年12月12日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 トランプ氏(トランプ次期米国大統領、以下同様)は、米国第一主義を掲げています。具体的な政策が今一つ見えて来ない段階で、将来を予測するのは危険ですが、様々な可能性について考えてみることにしましょう。

米国の保護主義は米国の得になる

iStock

 トランプ氏は、米国の製造業を守るため、中国からの輸入品に高額の関税をかける、と発言しています。また、氏はTPPからも離脱すると宣言しています。中国以外に対しても、米国第一主義の観点から様々な輸入制限などが課されるとしましょう。

 そうなれば当然、中国等の諸外国からも米国製品の輸入制限などが課せられるようになるので、米国の輸出も減ってしまうでしょう。果たして、それでも差し引きして米国の利益になるのでしょうか?

 一般論としては、自由貿易が「国際分業」により各国にメリットを与えるとされているので、これに反する動きは各国にデメリットを与えると考える人が多いでしょう。「経済合理性が国内政治力学に負けた」と考える人も多いでしょう。

 しかし、米国にとっては、そうとも限りません。米国は輸入が輸出より圧倒的に大きいので、保護主義が蔓延して世界の貿易が縮小した場合、輸入減少による国内生産の増加が輸出減少による国内生産の減少よりも遥かに大きいからです。

 加えて、米国の輸入品は「国内でも作れるが、輸入の方が安いから輸入しているだけ」というものが多い一方で、輸出品は「途上国では作れないから米国から買わざるを得ない」というものが多いので、貿易戦争になっても輸出が止まってしまう訳ではありません。

 国際分業のメリットである「得意な物に特化でき、不得意な物を作らずに済む」という点も、米国にとっては大きくないでしょう。たとえば日本政府が小麦農家保護のために小麦の輸入を制限したら、国内小麦農家の生産性が米国小麦農家の生産性よりも遥かに低いので、小麦の国内価格が高騰して大変なことになるでしょうが、米国の洋服メーカーの生産性と中国の洋服メーカーの生産性は、人件費の差を調整した後で比べると、それほど違わないので、米国人が中国製洋服から米国製洋服に着替えたとしても、影響はそれほど大きくないでしょう。

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