世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年12月9日

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 フィナンシャル・タイムズ紙が「日本はロシアに注意深く対応しなければならない。短期的リスクが長期的な戦略論理を相殺する」との社説を11月8日付で掲載、日本がG7の団結を乱しているのは深刻な誤りではないかと論じています。社説の論旨、次の通り。

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 安倍総理はプーチンと不思議な外交的ダンスをしている。ウクライナとシリアでの出来事がロシアの政府と日本の同盟国の米・EUとの距離が広がる中で、彼のタイミングは理解困難に見える。しかし、安倍氏は、長期的でグローバルな論理に反応している。問題は、深刻な短期的リスクと戦略的理由づけをどうバランスさせるかである。

 日ロ両首脳は意義のある成果の達成に投資している。安倍氏は北方四島をめぐる領土紛争の行き詰りを打開することに公にコミットしている。この紛争が日露平和条約の署名を妨げてきた。
安倍氏にとり島は重要な成果になる。安倍氏はロシアへのより大きな影響力がより深い中露同盟の形成を抑止すると希望している。ロシアへの接近は日本の対中戦略の一部でもある。東シナ海では尖閣紛争、中国のガス田開発が日中の緊張を高めている。安倍氏はロシアを引きつけることで中露間にスペースを作ることを希望している。

 基礎作りのために日本はロシアとの経済関係を拡大しようとしている。プーチンはこのアプローチを好んでいる。彼は特にシベリアにおけるエネルギー・プロジェクトへの外国投資を切望している。彼は紛争中の島について交渉する意欲を示し、日本では希望が出て来ている。

 世界は中国の自己主張に直面し、安定的な力のバランスの維持に焦点を合わせている。日本のアプローチはその面で有益でありうる。ロシアが権威主義ブロックの中の「ジュニア・パートナー」になり、中国の影響下に永久的に入ってしまうチャンスを減らすことになる。しかし、そういう結果がでるためには数十年必要であろう。

 中期的には、プーチンへの日本のアプローチはG7の調整を弱め、モスクワに対する制裁を掘り崩す。

 日本の国益へのリスクもある。多くの専門家は、日本は1956年の共同宣言で平和条約調印時に返すとされた歯舞、色丹の2島しか得られないだろうという。これは全体の7%であり、経済的、安全保障上の意味はほとんどない。この小さな利得のために、日本は米あるいはEUを疎外するリスクを冒せない。

 また中国とのライバル関係で、平和条約調印後でさえロシアが意味のある支持をすると期待すべきではない。ロシアは中国に対し警戒心を持つが、特にガスを東に送るパイプラインについて中国との強い経済関係を望む気持ちはそれ以上に強い。

 日本が長期にわたる紛争を片付け、中国の地域での増大する力を相殺する道を捜そうとするのは理解できるが、それをG7の分裂というコストを払ってすることは深刻な誤りであろう。

出典:‘Japan must proceed cautiously with Russia’(Financial Times, November 8, 2016)
https://www.ft.com/content/65b55402-a501-11e6-8b69-02899e8bd9d1

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