ASEANスタートアップ最前線

2016年12月9日

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宮崎学 (みやざき まなぶ)

ベンチャーキャピタリスト

IMJ Investment Partners, Principal。2011年に株式会社電通に入社。以来、一貫してデジタル・マーケティング業務に従事。大手通販企業や金融機関のクライアント担当として、デジタルメディアを活用したマーケティング戦略立案と、事業成長にコミットした広告運用を得意とする。2015年、IMJ Investment Partnersに参画。ASEAN各国の投資案件発掘に加え、投資先の経営支援を行う。日本企業のアジア進出支援、アジアベンチャーの日本進出支援も担当。筑波大学にて学士(国際関係学)、東京大学にて工学修士(技術経営戦略学専攻)を取得。

※IMJ Investment Partnersは、シンガポールを拠点に、東南アジア全域で活動するベンチャーキャピタルです。本連載、並びにIMJ Investment Partners へのお問い合わせ・ご要望はこちら

 早いもので、2016年が終わりに近づいている。今年も数多くのスタートアップに会ってきたが、ASEAN諸国の中で、最もダイナミズムを感じる領域、それが自動車の流通市場である。中でも、流通市場の根幹を支える自動車(主に中古車)の売買を行うマーケットプレイス、およびその購買を支えるオートローンの領域で特に変革を感じた。自動車流通のプレイヤー概観と合わせて、ユニークなビジネスモデルでチャレンジする2つの事例を紹介したい。

東南アジアの人にとって、自動車やモーターバイクは生活必需品 

インドネシアの渋滞

 まず、シンガポールを除く各国で、自動車・モーターバイクは「絶対的な」生活必需品である。公共交通機関が発達していないために、皆安定した職(所得)を得ると、真っ先に買うものはモーターバイクか自動車である。原付バイクは単価が20万円くらいと比較的手が出しやすいため、いわゆる人口の大半を占める月給3-4万円の層でも簡単にローンを組める。インドネシアだけで1億台が走り、域内合計で2億台以上走っていると推察される巨大マーケットである。インドネシアやタイに行けば、これは肌で感じて頂けるだろう。

 一方で、自動車は極めて高級品である。一般的に、新車を購入する場合は、頭金が購入価格の(国によって異なるが)3割程度必要とされることが多く、多くの人はあきらめざるを得ない。また、ローンの審査も厳しく、マレーシアの新車ディーラーの方の話によれば、通過率は5割以下とのことだ。恐らくインドネシアやタイではさらに低いのだろう。それでも、自動車を持つことは現地の人にとってあこがれであり、生活水準を劇的に向上させるため、皆こぞって購入する。結果として、年間の新車販売台数は300万台、日本の約6割まで成長するに至った。

 このように、生活必需品の自動車やモーターバイク、新車が買えない人はもちろん中古車を買いにいくわけだが、中古車の流通マーケットは、価格や査定の質という意味でまだまだ整備されていない。加えて、購入するほとんどの人(自動車の場合は8割ともいわれる)がローンを組むわけだが、審査率が厳しいと販売台数も伸びていかない。厳しくなる審査の理由の一つに、買い手の信用情報がいまだ整備されていないから、という点が挙げられる。では、スタートアップはどのようにこれらの問題を解決しようとしているのか――。

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