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2016年12月19日

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清水唯一朗 (しみず・ゆいちろう)

慶應義塾大学総合政策学部准教授

1974年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。03年 慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程単位取得。05年法学博士(慶應義塾大学)。10年〜慶應義塾大学総合政策学部准教授。著書に『近代日本の官僚―維新官僚から学歴エリートへ』(中公新書)

 「今時の若い者は政治に関心がない。この国の将来をどう考えているのか」。中年男性を中心によくこんな不安とも小言ともつかない話を耳にする。昨年、選挙権年齢が20歳以上から18歳以上に引き下げられたが、この時も「若者の政治に対する関心を高める必要がある」から選挙権年齢を引き下げるという説明がしばしばなされた。果たして本当に若者は政治に関心がないのだろうか。

 結論を先取りすれば、この言説は国際的に見ても、国内的に見ても否定される。

 まず国内から見てみよう。たしかに若者の投票率は他の世代に較べて低い。2016年の参議院議員選挙では全体の投票率が54.7%であったのに対して、20代は35.6%に止まった。全体に較べて19.1%低いことは看過できない状況である。

 しかし、叙上のような警世を口にする今の50代が「若者」であったころはどうだろうか。今から27年前、1989年の参議院選挙の投票率は、全体で65.02%であるのに対して20代は47.42%に止まっている。20代と全体の差は18.35%であり現在と大差ない。昔の若者も政治に対する関心は薄かった。自分のことを棚に上げた説教は避けたいものだ。

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政治への関心が高い日本の若者

 次に国際比較をしてみよう。2008年に行われた世界青年意識調査では、58%の日本の若者が「政治に関心がある」と答えた。これはアメリカ(55%)、韓国(50%)、イギリス(33%)など他の調査対象国と較べて最も高いものであった。政権交代への期待が感じられる。

 もっとも、5年後の2013年調査ではこの数字は50%に下落し、対照的にアメリカは59%、韓国は62%、イギリスは55%と上昇した。とはいえ、他国との差はきわめて小さい。これらの国と較べても、日本の若者が政治に関心がないという言説はまやかしであることがわかる。

 では、この言説はどこからやってくるのだろうか。世界35カ国を対象に40年近く行われてきた世界価値観調査を分析した田辺俊介氏、高橋征仁氏らは、政治に対する関心が学歴や年齢に比例して上昇することを指摘している。どの国でもどの時代でも、若者の政治に対する関心は、中高年のそれに対して低く現れる普遍的な現象ということだ。

 ただ、田辺氏らは興味深い指摘もしている。日本ではこの上昇度合いが他の国に較べて大きいというのだ。若者の政治に対する意識は国際的に見ても低いものではないが、中高年になるほど他国に比して高くなるという傾向は興味深い。「意識高い系」は日本の中高年にこそ当てはまるのかもしれない。

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