風の谷幼稚園 3歳から心を育てる

2010年4月15日

»著者プロフィール
著者
閉じる

野村 滋 (のむら・しげる)

株式会社コンテンツ・ファクトリー代表

情報誌会社勤務時代に取材で、創立間もない風の谷幼稚園と出会う。その後12年間、風の谷幼稚園の変遷を追い続けている。風の谷幼稚園の教育実践記『4歳の胸のうち』『5歳の誇り』を同社から出版。

 なぜならば、まずポシェットを自分で編むということは5歳児にとっては、決してやさしいことではない。むしろ、ハードルは高いが、「少し背伸びをすればなんとかなる」目標でもある。だからこそ、多くのことを学べるのだ。

 天野園長がこのポシェットづくりにおいて掲げているフレーズは、「子どもにゴミは作らせない」。誤解のないように付け加えておくと、もちろん、子どもたちが一所懸命に作ったものをゴミだと思っているわけではない。しかし、「せっかく作るのであれば実際に使えるものを作らせたい」という気持ちとともに、その水準を目指すからこそ、子どもたちの成長力が引き出せると考えているのだ。そして、出来栄えが不十分であれば「やり直し」に挑戦するよう指導する。

 こうして、子どもたちは何度もやり直しをしながら、「実際に使えるポシェット」を作り上げていく。そして、出来上がったポシェットは、子どもたちの幼稚園の最後の学期に素敵な彩りを添えることになる。その様子を学級通信から見てみよう。

自分たちで作ったポシェットをさげて、鳥2組(年中児クラス)と一緒に散歩に出かけました。ポシェットの中には特別に、ティッシュペーパーにくるんだ氷砂糖を忍ばせて・・・。
“鳥組には内緒ね!”としてあったので、子どもたち、言いたくてウズウズ。
「このなかには、ティッシュのゴミが入っているからねぇ」と里菜ちゃんにむかってわざわざアピールしていた奏ちゃん。
「そうそう、鼻水が出ちゃってそのゴミがね」と同調する健くん。そう言いながら、さっきまで車道側を歩いていたかと思ったら、ヒョイと鳥組の嵐くんと入れ替わり、また少しするとすぐに車道側へ。―なんと下の沢に続く崖のところだけは自分が崖側を歩くようにと場所を入れ替わってあげていたのです。
(嵐くんに向かって)「はい、もういいよ」と言う健くんの言葉を聞いて“もしかして”と思い聞いてみると、「そう、ここちょっと怖いかなと思ってね」との返事。そこまで考えられるようになっていることに今更ながら驚いてしまいました。
たんぽぽ畑に着いても、手をつないできた相手とずっと一緒に遊んでいた子どもたち。“最後に一緒にあそんだこと、ずっと覚えていてね”―そんな子どもたちの気持ちが伝わってくるようでした。
風2組 学級通信「麦」より

 この手作りポシェットは、まさに3年間の成長の証であり、その中には素敵な思い出がいっぱいに詰まっているようだ。


※次回の更新は、4月22日(木)を予定しております。

風の谷幼稚園
園長・天野優子氏が、理想の幼児教育を実現するためにゼロから建設に乗り出す。様々な困難を乗り越え、1998年に神奈川県川崎市麻生区に開園。「人間が人間らしく、誇りを持って生きていく」ための教育を実践している。

「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
週に一度、「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします。

関連記事

新着記事

»もっと見る