2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年1月27日

 この社説が末段で結論的に言っていることは正しいと思います。トランプにはアジアにおける米国の役割を強化するチャンスがありますが、逆に、平和と安定を犠牲にした取り引きに走る危険もあります。

ぐらつくドミノ

 フィリピンが「ぐらつくドミノ」であり、トランプはフィリピンと巧くやることが重要というのも、その通りです。但し、フィリピンが中国やロシアとの関係をもてあそぶ状況、あるいは韓国やインドネシアから戦闘機や艦船を調達し始めた状況をもって、米国に最早頼ることが出来ないと感じ始めている証拠だというのは、言い過ぎだと思います。

 一方、アジアで危険な軍拡競争が進行しているという認識は間違っていると思われます。オバマ政権の「リバランス」政策は何もかも不成功というわけではありません。米国がアジアに安定のための力としてとどまることを明確にし、ベトナム、フィリピン、インドなどとの関係に安全保障上の展開が見られたことは事実です。現在進行していることは、「リバランス」政策を支えとして、中国の挑発的な行動を前にして、アジア諸国が安全保障上の関心を高め、安全保障を強化するささやかで健全な努力を行っていると見るべきものです。

 トランプ政権の出方いかんにかかわらず、この努力は継続されなければなりません。トランプ政権は恐らくはアジア諸国の自助努力の強化を求めることになるのでしょう。トランプがアジアにおける米軍のプレゼンスを強化するとしても、そのことが前提となるでしょう。

  
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