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2017年2月21日

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崔 碩栄 (チェ・ソギョン)

ジャーナリスト

1972年韓国ソウル生まれ。韓国の大学で日本学を専攻し、1999年渡日。関東地方の国立大学で教育学修士号を取得。日本のミュージカル劇団、IT会社などで日韓の橋渡しをする業務に従事する。現在、フリーライターとして活動、日本に関する紹介記事を中心に雑誌などに寄稿。著書に『韓国人が書いた 韓国で行われている「反日教育」の実態』(彩図社刊)、『「反日モンスター」はこうして作られた-狂暴化する韓国人の心の中の怪物〈ケムル〉』(講談社刊)がある。

 「軍艦島」への関心が高まっている。きっかけになったのは、この夏に韓国で公開予定の映画『軍艦島』である。映画『軍艦島』は日本統治期に長崎県端島(通称:軍艦島。以下軍艦島とする)に強制連行され、炭鉱労働を強要された、それはもう奴隷のように酷使されたという朝鮮人たちを描いた物語である。韓国人が日本の炭鉱労働について持っているイメージといえば、強制連行、飢え、重労働、殴打……など、正に「地獄」のような世界だ。日本側は当時の記録、元軍艦島の住民の証言をもって「地獄」を否定するが、その声は一般の韓国人の耳には届かず、韓国には「軍艦島=地獄」という認識が定着している。

軍艦島(iStock)
 

朝鮮人強制連行悲劇のシンボルになった「落書き」

 下に示す動画を見て欲しい。韓国の公営教育放送EBSが2014年12月18日に放送した教養番組「e歴史チャンネル」の1分10秒の部分に登場する場面。番組の導入部分として登場したこの画面で右下に書いてある『지워지지 않는 상처-강제동원』(消えない傷―強制動員)というのがこの日のテーマだ。

(youtubeのEBS公式アカウント):https://www.youtube.com/watch?v=wEoavGVudKg

 番組の内容は日本統治期、動員令により軍艦島に強制動員された朝鮮人たちの記録――危険な作業に従事したにも関わらず給料さえもまともに貰えない状況下で酷使され続けたり、あるいは、地獄のような島を脱出しようとして命を失った人々も少なくなかったというものである。

 導入部に登場したこの白黒写真は炭鉱の朝鮮人寮の壁に残されたという朝鮮人の落書きであるが、「お母さんに会いたい」「お腹すいたよ」「故郷に帰りたい」と書かれている。番組の内容を圧縮したような強力なメッセージである。この番組を見た韓国人の多くが日本に対して怒りの感情を抱いたことは間違いないだろう。だが、ここには見逃してはならない大きな問題がある。それはこの写真資料が「捏造」されたものだという問題である。

 実は、この写真は韓国ではよく知られた「写真資料」だ。ずいぶん前から書籍、新聞、TVなどを通じて紹介されているもので、最近でも軍艦島の強制連行についての話をするときには頻繁に持ち出されているものだ。つまり、この話で韓国人が日本に対する反感を抱くようになるために一役買っている「写真資料」なのである。

軍艦島の背景として落書きが挿入されたハンギョレ新聞の漫画(2015年7月7日)

『血と涙の島 軍艦島』というタイトル画像の背景に落書きを使用した朝鮮日報(2016年1月17日)

 尚、この写真は日本でも日本の植民地政策についての写真資料として大手メディアによって紹介されてきた。例えば、毎日新聞社が発行した書籍の中で、朝鮮人に対する日本の過酷な虐待の例として紹介されている。『別冊1億人の昭和史 日本植民地史①朝鮮』。だが、この写真資料は、いつ、どのようにして誕生したものなのか。その事実は伏せられたまま、写真だけが独り歩きしているのだ。

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