前向きに読み解く経済の裏側

2017年2月27日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 労働力不足が叫ばれています。アルバイトが集まらないので、各社が競争してアルバイトを集めており、アルバイトの時給は順調に上がっているようです。それにしては、サラリーマンの賃上げは僅かですね。今回は、どうしてアルバイトの時給は上がるのに、サラリーマンの賃上げが僅かなのか、考えてみましょう。

アルバイトの時給は、需要と供給で決まる

(iStock)
 

 アルバイトの時給は、需要(求人数)と供給(求職数)が一致する所に決まります。需要と供給が一致する時給があまりに低いと、最低賃金を下回ってしまうので、その場合は最低賃金が時給となりますが、そうでない限りは需要と供給で決まります。

 求人が求職より多ければ、「当店は、ライバルより時給が高いから、ライバル店で働くのをやめて当店に移って来ませんか?」といった勧誘がアルバイトの所に来るので、ライバル店としてもアルバイトを引き抜かれないように「当店の時給も高くするから、辞めないでくれ」と言わざるを得ず、結果として、どちらかの店が諦めて需要と供給が一致するまで時給が上がって行くわけです。

 パートや派遣といった非正規労働者の賃金は、アルバイトと同様です。いつでも労働者が他社に引き抜かれる可能性があり、それに対抗するためには賃上げをせざるを得ない、というわけです。

正社員は終身雇用で年功序列だから引き抜かれない

 正社員は、「日本的雇用慣行」ですから、終身雇用が原則です。会社側からの解雇とは異なり、従業員の方から退職する自由はありますが、年功序列賃金なので、退職するインセンティブを従業員が持ちにくいのです。

 年功序列賃金ですから、若い時には会社への貢献よりも低い賃金で我慢しますが、中高年になると会社への貢献よりも高い賃金が受け取れます。途中で転職したとして、会社への貢献と同じ給料しか受け取れないのであれば、転職せずに今の会社に残った方が得なのです。

 現在の賃金でも他社に引き抜かれないということを会社側が熟知しているので、労働力不足になっても正社員の給料を引き上げるインセンティブを会社が持っていないのです。これでは正社員の給料は上がりませんね。

 例外は、新入社員でしょう。労働力不足で採用戦線が売り手市場になっていますから、初任給を引き上げないと、優秀な学生を採用することができません。初任給だけ上げると、2年目と給料が逆転しては困りますから、若手社員の給料も上がるでしょう。加えて、学生が先輩訪問をした時に、「ライバル企業より薄給である」と話されてしまうと困るので、学生が接触しそうな入社数年目までの若手社員はある程度賃上げが行なわれるかもしれません。

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