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2017年3月12日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

メディアとしての責任

 ヤフーはこれまで、ニュースの生産者であるメディアからコンテンツの提供を受けてサイトにアップするだけの、いわば流通業的役割しか果たしていなかった。ニュースの流通は担うが、生産はしていなかったため、真のメディアと言うには疑問とする見方もあった。しかしヤフーは、昨年2月に情報提供元と、メディア系サービスを運営するための基本方針として「メディアステートメント」を発表し、「間違った情報をアップした場合、その情報を流通させた責任は生じると考える。その場合、ユーザーに対して訂正を知らせるなど、正しく情報を発信する体制を整えている」として、メディアとしての責任を自覚してきている。

 一方で、「トピックス」の記事は「以前ほど面白くなくなった」という声も聞こえてくる。面白い記事の基準は人によって違うが、ヤフーはメディアとしての責任を重く受け止め、慎重になり過ぎている面があるようだ。

 最高裁判所がネットの検索サイトに表示された逮捕歴の削除を巡る問題で、2月1日までに削除を認めない決定をしたが、ヤフーなどサイトを編集する側は、今後は表現の自由とプライバシー保護の両方の視点から逮捕歴など、社会の関心が高い情報で難しい判断が求められる。ニュースサイトはこれまでは大量のニュースを流すだけで、その価値判断は読者に任されていたが、ニュースの真偽が確かめられてないフェイクニュースが散見される中で、膨大なニュースの中から真偽をも見極めて編集する判断能力が要求されている。

 影響力が大きくなったヤフーとしては、こうした新たな状況の変化も踏まえて今まで以上にニュースの「品質」を重視せざるをえなくなった。記事は書かないものの、どういう判断でどの記事を掲載するかは編集者としての判断が問われる。このため、2年前から西日本新聞に新卒の編集スタッフを派遣して勉強させるなど、編集内容の向上に力を入れている。

「紙」重視の新聞社

 日本新聞協会によると、2000年から16年までの新聞発行部数をみると、グラフにあるように一貫して右肩下がりの傾向が続いている。一般紙とスポーツ紙でみると、どちらも苦しい状況が続いている。一般紙は00年には4740万部あったのが、16年には遂に4000万の大台を割り込んだ。スポーツ紙は同期間に630万から345万と半分近くまで大幅な落ち込みになっている。

 部数の落ち込みをデジタル化で食い止めようと、読売新聞が1995年にヨミウリ・オンライン(YOL)を、朝日新聞は同年、アサヒ・コム(asahi.com)を開設した。その後、全国紙は新聞記事をすべてデジタル化した電子新聞を発行するようになり、日本経済新聞は10年から、朝日新聞は11年から有料の電子新聞をスタートさせ、この波は地方新聞にも及んだ。しかし、このころヤフーなどの広告モデルの無料のニュースサイトが多く登場、「ニュースは無料」が当たり前となったため、有料の電子新聞はヒットしなかった。

 新聞社をみると、あくまで「紙」を重視し、新聞を購読している読者のみに電子新聞を発行する社と、「紙」を読んでなかった人も含めて購読者を増やすため電子新聞を単体でも販売する社に分かれる。

 前者の考え方の読売新聞は「紙の新聞はニュースの価値、内容に応じて理解されやすいように整理されていて、報道や言論活動の最適の媒体だと考えており、紙の新聞を基軸に据える」(同新聞グループ本社広報部)。

 中日新聞も「電子版(中日プラス))は販売店との共存を目指して立ち上げたため、新聞購読者のみを対象としている。あくまで『紙』が主体だが、スマホの普及に合わせ、インタラクティブ(双方向)コンテンツや動画などの提供を増やしてきた。『デジタル』でペンとの補完的な役割が果たせればと考えている」(編集局電子編集部)と指摘する。新聞の部数は減っても主役は「紙」で、電子新聞は「脇役」という位置づけだ。

 全国的にみると、その地域の新聞の購読比率が高いところほど「紙」を維持することへの自信とプライドが強く、デジタル化への取り組みが遅れている。中には「紙」に「回帰」する動きさえみられる。

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