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2017年3月12日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

成功した「日経電子版」

 日本経済新聞は、日経電子版を発行して以来、着実に有料会員数を増やし、1月の同社の発表では、20歳代と女性の読者層が増えて50万人の大台を超えた。273万部(日本ABC協会調査)の購読部数がほとんど減らない中で、50万もの有料会員を獲得しているのは成功モデルと言える。電子版は紙面の記事を1日300本、電子版オリジナル600本の計900本の記事を配信、オリジナルを増やしている。機能的にも、スマホを使って指定した記事を読み上げることができるようにするなど、進化してきている。

 日経は単独の販売店がないため、電子新聞が増えても販売店から反発が少なく、全国紙が抱えるような販売面での障害がない。コンテンツ的にみても為替や株価などリアルタイムでの速報へのニーズが高く、ゼネラルニュースが多い一般紙と比較して優位に立てる条件がある。

気になる紙の減少

 朝日新聞広報部によると、デジタル版を閲覧している会員数は約280万人でそのうち約1割が有料会員(昨年12月)。ニュースをアップするだけでなく、読者から取材のリクエストを受けたトピックを取材し、ネット上のあいまいな情報を当事者に取材して突き止めるなど、読者と向き合ったサイトとして「withnews(ウィズニュース、通称ウニュ)」を14年に開設、若い世代の読者を意識している。「ウニュ」は自社サイト内だけでなく、ネット空間に記事コンテンツが単体で流通しPVは順調に伸びているという。

 読売新聞のサイト「YOL」の中で人気なのが、女性向けコーナーの「大手小町」と掲示板「発言小町」だ。同新聞グループ本社広報部によると「『発言小町』に書き込まれるテーマは、恋愛や子育て、仕事から身近な疑問まで多岐にわたり、女性に関心の高い情報を発信している」。女性を味方につけたこのサイトの月平均アクセス数は3億6000万PV(「新聞研究」14年8月号」)あり、新聞社のサイトとしては高いPVになっている。

 産経デジタルは昨年12月にスマホ用に無料で提供していたコンテンツの有料化に踏み切った。鳥居洋介産経デジタル社長は「これまでヤフーにニュース提供するなどにより収入を得てきたが、これだけの『一本足打法』では限界がある。無料と有料ニュースコンテンツの両方を伸ばしていきたい。最近は有料ニュースが見直されて、少しずつ有料ニュースが見られるようになっている」と有料化を前向きにとらえている。

 西日本新聞は昨年10月に電子版を発売した。「新聞紙面に親しみがある『新聞ファン』層をターゲットにし、高齢者層がボリュームゾーンのため、マーケットは小さい。地方紙が有料課金モデルで収益を確保するには、新聞に関心がない若年層にどうやってアプロ-チをするかが鍵を握っている。新しい読者層を開拓するために、新聞コンテンツをどう加工するか試行錯誤を続けている。現在はヤフーやスマートニュース、LINEなどネットユーザーがいるところにニュースを配信し、無料ニュースサイトに誘導することで広告収入を確保しているが、今後は記事ごとの課金も検討する」(同新聞広報部)という。

 神戸新聞はスポーツ紙「デイリースポーツ」も発行している。大町聡デジタル事業局長は「『デイリースポーツオンライン』のサイトは広告収入でうまくいっている。経済情報や競馬予想などのコンテンツは有料課金に適しているが、一般ニュースはコンテンツ課金で収益を上げるのが難しい。今後は紙の信頼性を生かしながら、新聞非購読者にもデジタルならではのコンテンツを提供することで地域とつながるビジネスモデルを作りたい」と地域との関係を重視する。

 佐賀新聞は13年8月から有料でニュースの提供を開始した。森本貴彦編集局メディアコンテンツ部長は「5割弱という普及率の低さや若年層にリーチできていない中、今のところは認知度アップや読者への付加価値というサービスの側面が強い。(有料化は)デジタルが主流になり収益モデルが代わるだろう将来に向けた投資的側面や、次世代の読者づくりに備えた戦略」と話す。同新聞は、ICT(情報通信技術)教育に取り組んでいる佐賀県教育委員会と、同新聞電子版を県立高校の授業で活用する協定を締結、14年4月から県立高校生全員に電子版コンテンツの提供を始めた。提供件数は万単位となり、佐賀新聞にとって貴重な収入源になっている。

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