2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年3月13日

 トランプ政権の下で豪州は米国に頼れず、豪州は暗黙裡に中国がアジアの指導者となることを認め始めるだろう、という判断は悲観的に過ぎると思われます。確かに、トランプの電話会談でのターンブル首相への対応は非礼でした。豪州が憤慨するのも無理はありません。しかし、あの電話会談でのトランプの態度が、トランプ政権のアジア太平洋政策を象徴していると見るのは短絡的すぎます。

 トランプ政権のアジア・太平洋政策は、他の多くの政策同様、未だ十分検討されていません。トランプは「米国第一」を主張し、自由と民主主義の擁護には関心がないと言われますが、対外関係については、選挙中の発言を徐々に軌道修正しつつあります。日本については、「駐留米軍の経費の分担が少ない。日本が公正な負担をしないのなら、米国は防衛義務を見直すべきである」と言っていましたが、先般の日米首脳会談の共同声明では、「揺らぐことのない日米同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄、自由の基礎である」「威嚇、強制または力によって海洋に関する管理を主張しようとするいかなる試みにも反対する」と述べ、従来の米国の政策が変わらないことを明らかにしました。

ティラーソン国務長官の役割

 それに加えて、トランプ政権ではティラーソン国務長官が重要な役割を果たすでしょう。ティラーソンは上院における承認の公聴会で「米国の指導力は再生されるのみならず、主張されなければならない」と述べ、また、同盟の維持の重要性を強調しました。

 ティラーソン国務長官は、このような基本的考えの上に立って、こじれた米豪関係の修復に努めることが期待されます。

 日本の役割も重要です。安倍政権には、アジア太平洋地域の平和と安定のため、これまで以上の役割を果たす用意があります。その一環として米豪関係の修復に貢献することは可能と思われます。

  
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