今月の旅指南

2010年5月28日

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辻 一子 (つじ・いちこ)

岡山県生まれ。フリーライター。旅行会社のPR誌の編集者を経て、1998年からフリーランスに。旅の雑誌を中心に活躍。

 5月から6月にかけて富山県の砺波〔となみ〕地方で行われる祭りに「夜高祭〔よたかまつり〕」がある。「夜高」とは巨大な行燈〔あんどん〕が乗った山車のことで、これを曳いて町を練り歩き、激しくぶつけ合う。

 代表的なものに、福野夜高祭、津沢夜高あんどん祭り、庄川観光祭などがあるが、シーズンの最後を飾って華々しく開催されるのが、砺波市の「となみ夜高まつり」だ。

 「となみ夜高まつりは、大正時代に豊年満作・五穀豊穣を祈る田祭りとして始まったと伝えられています。龍や宝船などをかたどった行燈は、他の地域のものと比べて、色彩が華やかで、明るいのが特徴です」

 と語るのは、砺波夜高振興会事務局の森田要さん。行燈は各町内の人たちが毎年、総出で手作りする。竹で骨組みを作り、和紙を張り、デザイン、色づけ、ロウ引き……と、完成までに2カ月以上費やすが、行燈づくりにかける町の人たちの思いは熱い。というのも、祭りの初日夜に、大行燈の豪華さを競うコンクールがあり、行燈の出来栄えには町の威信がかかっているのだ。

 祭り当日は、各地域から大小20基余りの夜高行燈が繰り出す。そしてコンクールが開催される夜9時になると、14基の大行燈が本町通りに集結する。煌々〔こうこう〕と輝く極彩色の大行燈が一直線に並ぶさまは壮観そのものだ。

きらびやかな14基の大行燈が本町通りに勢ぞろい


  祭りのもう1つの見どころは、2日目の夜に繰り広げられる“突き合わせ(ぶつけ合い)”だ。向かい合った2基の行燈が全速力でぶつかり、押し合い、壊し合う。もともとは、各町内の行燈を曳きまわしているとき、互いに道を譲りたくないために、行燈を押し合ったことから始まったらしいが、その壮絶さたるやまるで闘いのよう。佳境に入ると、「ヨイヤサー!」という掛け声が次第に速く、大きくなり、町じゅうが興奮のるつぼと化す。

 「激突によって行燈が壊れることも多々あるんですよ。それでも、たった2日間だけのために2カ月かけて行燈を作る。壊すために作るようなものです。そこがこの祭りの粋なところかもしれませんね」

 喧騒に包まれた夜の祭典が終わると、チューリップで有名な砺波の町は、元の静けさを取り戻す。

 
 
 
 

となみ夜高まつり
〈開催日〉毎年6月の第2金・土曜。2010年は6月11~12日
〈会場〉富山県砺波市・中心市街地(本町通り)(城端〔じょうはな〕線砺波駅下車)
〈問〉砺波商工会議所 0763(33)2109
  http://www.city.tonami.toyama.jp/
  http://yotaka.fc2rs.com/

◆ 「ひととき」2010年6月号より

 


 

 


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