海野素央の Love Trumps Hate

2017年4月10日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「トランプの天敵―フリーダム・コーカス(自由議員連盟)」です。ドナルド・トランプ米大統領はバラク・オバマ前大統領の医療保険制度改革(通称オバマケア)の代替法案に対する支持を、野党民主党議員に加えて与党共和党議員の一部からも得ることができませんでした。その結果、同法案を撤回せざるを得なかったのです。その主たる要因となったのが、共和党下院保守強硬派の議員連盟「フリーダム・コーカス」という対抗勢力です。本稿では、フリーダム・コーカスがどのような特徴を持った議員連盟なのか、今後も同大統領の天敵となるのかについて述べます。

春を迎えたワシントンDC(iStock)

フリーダム・コーカスの特徴

 2015年1月フリーダム・コーカスは9人の下院議員で設立されました。初代議長はジム・ジョーダン下院議員(共和党・オハイオ州第4選挙区)です。トヨタ公聴会で急先鋒であったダレル・アイサ下院議員(共和党・カリフォルニア州第49選挙区)のようにフリーダム・コーカスのメンバーか否か態度を明確にしない議員がいますので正確な数字は把握できませんが、メンバーは30から40人いると見られています。

 フリーダム・コーカスは、減税及び財政規律を重視しています。この点において反オバマ色の強い保守系の市民運動である「ティーパーティー(茶会)」と類似しています。次の税制改革でフリーダム・コーカスはトランプ大統領のインフラ投資に反対し、公約実現に対する阻害要因になる可能性が高いと言えます。

 ピュー・リサーチ・センターの調査によりますと、ラウル・ラブラドア下院議員(共和党・アイダホ州第1選挙区)はヒスパニック系ですが、フリーダム・コーカスの他のメンバーは圧倒的に白人男性であり文化的多様性に欠けています。選挙区は南部に偏っているという特徴があります。

トランプとオバマの類似点

 フリーダム・コーカスのメンバーは今回の代替法案をオバマケアの部分的修正と捉え、「改革が不十分」で完全な置き換えになっていないと主張して反対に回りました。フリーダム・コーカスの影響力の大きさを数字からみてみましょう。

 2017年3月1日現在、下院は共和党が237議席、一方民主党が193議席占めており欠員は5です。読者の皆さんの中には、フリーダム・コーカスの議員数は237人の内40人ほどではないかと思われる方がいるかもしれません。ところが、フリーダム・コーカスのメンバーが結束をすると法案を葬ることができるのです。

 今回のオバマケアに対する代替法案の可決には過半数216票が必要でした。仮に民主党議員全員及びフリーダム・コーカスのメンバーの内30人が反対すると、207になってしまい過半数に届かないのです。そこで同法案の撤回に至ったのです。オバマ大統領(当時)が民主党の財政保守主義を掲げる「ブルー・ドック」という対抗勢力によって医療保険制度改革に関して抵抗にあったのと同様、トランプ大統領も身内の反対勢力に苦戦しています。

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