チャイナ・ウォッチャーの視点

2017年4月10日

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小原凡司 (おはら・ぼんじ)

笹川平和財団特任研究員

1963年生まれ。85年防衛大学校卒業、98年筑波大学大学院修士課程修了。駐中国防衛駐在官(海軍武官)、防衛省海上幕僚監部情報班長、海上自衛隊第21航空隊司令などを歴任。IHS Jane’s、東京財団研究員などを経て現職。

 中国は、朝鮮半島に核兵器が存在することには反対だ。朝鮮半島が統一されることになれば、経済力で圧倒的に勝る韓国主導で統一が進み、結果として米国寄りの国家が、中国の喉元に核兵器を突き付けることになりかねない。さらに、中国指導部は、金正恩委員長に対して不快感も持っている。それでも、厳しい対外問題を抱えたくない中国は、北朝鮮を過度に締め上げることは避けてきたのだ。

 しかし、トランプ大統領は、経済問題と北朝鮮問題をパッケージにして、取引をしかけてきた。そもそも、トランプ大統領と習近平主席が具体的な解決策について議論することはないだろうが、中国側がトランプ大統領の意図を理解するには十分な会談だっただろう。危機感を高めた中国は、軍事衝突を避けるために、米国との取引において何が譲歩できるのか、北朝鮮問題を含めて考えなければならなくなっている。

 しかし、中国はこのルール変更を予期していたようにも思われる。中国が、トランプ大統領誕生直後から、この状況を理解していたかのように行動しているからだ。

 中国では、日米首脳会談の前日に行われた米中首脳電話会談において、習近平主席が米中「新型大国関係」という言葉を用いなかったことが話題になった。また、軍事的ゲームからはじき出されないよう、すでに、軍事力の増強を加速し始めたのも、その一つと言える。中国は、国際関係を大国間のゲームだと認識しているからこそ、敏感に感じ取ったのかも知れない。

日本がやるべきこと

 日本では、米国の「変化」ばかりが強調されているが、米国の各事象に対する対応が変化したわけではない。トランプ大統領は、国益に基づいて選択的関与を鮮明にし、優先順位を明確にしただけである。優先順位の低い問題には、とりあえず触れないということだ。

 しかし、そのトランプ大統領の優先順位に変化が生じたのは確かである。トランプ大統領に、シリア問題や北朝鮮問題が危機的な状況であると認識させ、軍事攻撃を採ることが米国の利益になると認めさせた人間が、政権の中にいるということである。事実は、ただ存在するだけでは、人の行動に影響しない。人は、その事象を認識して、どのように行動するかを決定するのだ。同じ事象に遭遇しても、認識のし方によって、行動が変わるということでもある。

 日本にとって、米国の軍事力行使は他人事ではない。日本は、国際社会が、アナーキー(無政府)であり、目的追求のために軍事力が行使される現実を認識した上で、安全保障を含む日本の国益をいかに守るのかを考えなければならない。

 理想を実現するために軍事力を行使することが必要であるということが事実であるとしても、何が理想であるのか、その軍事力行使が理想実現のために効果があるのか等は、常に問題である。日本は、価値観を共有できる各国と協力するとともに、同盟国として米国との安全保障協力を強化し、トランプ政権の認識に影響を与え、こうした問題に関与しなければならないのではないだろうか。

  
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