チャイナ・ウォッチャーの視点

2017年4月14日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 4月6日と7日、米フロリダ州にあるドナルド・トランプ大統領私邸、「マール・ア・ラーゴ」において同大統領と中国の習近平国家主席の首脳会談が行われた。

 太平洋を挟んだ2つの大国のトップ会談とあって、日本のメディアのボルテージも高まった。しかしその焦点が、たった一つの両国間の対立に向けられていたことには、違和感を拭えなかった。

 結果、おそらく日本人の多くは、今回の米中首脳会談の最大の焦点が「対北朝鮮政策」だと誤解したのではないだろうか。

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数々の問題は「管理可能な相違」

 もちろん、年初から挑発行動を繰り返し首脳会談直前にもミサイルを試射した北朝鮮の行動は、東アジアに不測の事態を生じさせかねない危機をはらむ問題だ。緊急の対応が迫られる問題であることは、中国自身が「(米朝は)互いに加速しながら譲らない2台の列車だ」(王毅外相)とたとえていることからも理解できる。

 だが、新大統領の誕生――しかも前大統領とは明らかに違った特徴を備えた新政権の誕生――後、その変化を受けた初めてのトップ会談であれば、最重要テーマが朝鮮半島情勢のはずはない。しかも二国間関係の不安定化が事前に指摘されていたのである。まずは二つの大国関係がどこに向かおうとしているのか、その結果をしっかり報じるべきなのだ。

 事実、中国は当初、米国との関係を非常に憂慮していた。一度目の米中首脳の電話会談後に記者会見に臨んだ王毅外相は、「米中首脳会談前には(米中の)将来を少なからず懸念していた」と認めた上で、「(会談後には中米関係が)積極的な方向へ落ち着いて移行し、発展している」とほっとした表情を浮かべたのである。

 今回の会談では二国間関係を説明する言葉の中に、「相互尊重を基礎に意見の相違を管理することで合意した」との表現が見られたことは中国側にとって大きな成果であった。オバマ政権に対し「新型大国関係」という言葉を繰り返したように、この「相互尊重を基礎に……」という文言は、中国側が当初から繰り返し提案してきた関係であったからだ。

 つまり北朝鮮問題や南シナ海問題、通商摩擦といった問題は、「意見の相違を管理する」と表現された言葉の一つであり、“管理可能な相違”に位置付けられたということだ。

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