2024年4月25日(木)

東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年6月22日

「矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~」
(C)矢島美容室プロジェクト

 それから中島さん、とんねるずとDJ OZMAを起用した『矢島美容室 THE MOVIE ~夢をつかまネバダ~』って映画をつくられたところだし、中島信也とは誰なんだというお話も後で伺います。広告に思い入れがある人なのか、映像作家なのかという。でもまずは、広告論ですね、中島信也流の。

中島 いま言われた4マス。それ以外だと例えばダイレクトメールや屋外広告がありますが、広告づくりをするということは即4マスに載せること、それこそが花形で、それ以外あまり思いつきさえしないって状況で、僕らはずっと生きてきたわけです。

 そこでやってきたことというと、僕らはともかく暴れまくって、「面白いことやった者勝ち」だったし、それでよかった。だってやりすぎたら、そこはマス媒体の方で自制をきかせてくれる。それだけ信用のおける媒体を使わせてもらえていたからこそ、広告の作り手は好きなように暴れることができたという、そういう相互関係だったと思いますね。

 ああ、われわれ、そういう前提で仕事をしてきたんだと、インターネットが広告媒体として台頭するにつけ、つくづく思いますね。行き過ぎは媒体サイドでチェックが入るっていうのを暗黙の前提にしながら、ともかく何だっていい、お客さんの目を引き付ける工夫をするんだってことで、これまで作ってきたわけです。

 人の目を引き、プラスの向きへ心を動かして、そして行動につなげていく。そのことで、広告主へのご奉公をするというのが、4マス時代の変わらない目標でした。

心が動かなければ広告ではない

中島信也氏

 広告主と大衆の、インターフェイス役なわけですね、僕ら広告の作り手は。だとしたら、僕らの生み出す表現は、まずは目にとまるものでなくちゃならないし、心を動かすものでありたい。それだけ考えてやってきたと言っていいかなあ。

 で、インターネットはっていうと、ここには規制らしい規制が全くない。「玉」があるけど、「石」もいっぱい混じってるメディアでしょう。4マスの上でできた範囲がある一定の幅だったとすると、そこをはるかに超えるものまでまかり通っているのがインターネットですよね。

 だからその分、手間が余計にかかるんです。つまり僕らがやっていることは「ちゃんとしている」ことなんであって、クライアントも「きちんとした」会社なんですよという、自己紹介を毎度やっていかないといけないわけですね。


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