2024年4月20日(土)

東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年6月22日

浜野 それは、今度のこのCM、だれそれさんで頼みますって広告主が指名してくる?

「変なこと」どんどんやれた時代があった

中島 そうですね。お客さまの方がリスク回避をものすごくされるので。

 そこへいくと僕ら、駆け出しは1981年とか82年ですから。面白けりゃ何だっていい。珍しいほどいいし、理解を拒むものだっていいっていうような寛容の気風がありましたよねえ。それが結果として「下剋上」にもなりましたし。

 どんどん「変なこと」をやれました。今は、全くその反対。クライアントがいて、広告代理店がいて、それで僕らのような広告制作会社がいてっていうこの構造の中で言うと、代理店さんも、どの案件もどれひとつ落とせないという必死さで。他方、クライアント企業は、この10年くらいかな、株主さんの意見をものすごく気にするようになっています。

 そんなこんな、冒険が許されなくなると、ある程度名前の確立したクリエイターに仕事を頼むということにどんどんなってく。結果、ちょっとヤングにチャンスがない状況でしたね、ここしばらく。これではあかんわ、困った問題や、ってことで、自主的な映像制作をあえて若い連中にやらせてみたりしていたんですが、ここへきて若者の需要が増えている。

浜野 それがインターネット?

中島 です。ネットの広告、とにかく作ってくれへんか? ハイわかりました、といって引っ張り出せるのは「巨匠」じゃない。若いモンでいいでしょ。 

次回につづく

中島信也(なかじま・しんや)
(株)東北新社専務取締役 CMディレクター
1959年福岡県生まれ大阪育ち。1982年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒。同年、東北新社へ入社後、1983年にTVCM演出家となる。
1993、94、95、96年に日清カップヌードル"hungry?"で日本人として初のカンヌ国際CMフェスティバルグランプリ・金・銀・銅賞を受賞。近年ではサントリーの「伊右衛門」「DAKARA」「燃焼系アミノ式」「PEPSI NEX」、資生堂の「新しい私になって」などを手がける。
2010年4月公開された映画「矢島美容室THE MOVIE~夢をつかまネバダ~」は、「ウルトラマンゼアス」(1996年)に続き、2回目の監督作品。


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