東大教授 浜野保樹のメディア対談録

2010年6月23日

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浜野保樹 (はまの・やすき)

東京大学大学院新領域創成科学研究科教授

1951年生まれ。工学博士。コンテンツ産業や制作に関する研究開発に従事する。主な著書に『大系 黒澤明』(講談社)『偽りの民主主義』(角川書店)『表現のビジネス』(東京大学出版会)などがある。(財)黒澤明文化振興財団理事、文化庁メディア芸術祭運営委員ほか。

前回の内容 日本のCMこれからどこへ?
編集部 中島さんが「面白ければ、それでいい」って暴れてごらんになった、その意味での代表作といったらなんでしょう。

中島 広告会社さんはきちんと理屈を立てて、これは正しい広告なんですとクライアントにプレゼンされておられますので不用意なことは言えないわけですけども、うーん、例えば「シュワちゃん(アーノルド・シュワルツェネッガー)」を起用した「アリナミンV」なんかですかね。

 「アーノルド君」が、人差し指と中指でVサインをつくってそこにアリナミンVのビンを挟み込んで「ちちん!!!ブイブイ!!」ってやったら「魔人V」が登場するっていう。落ちが「だいじょーV!!」っていうまたもや駄洒落で。1990年頃のものです。

 あのころ、世の中が一種まだ「乗り」で走ってましたから、買うのもノリ、飲むのもノリで、みたいな。勢いでなんでも済ますところがあったんですかねえ。

 今は違いますよ。いつどんなとき、いかなる動機で何を飲むのかっていう、消費心理を掘り起こすところからまじめに作ります。今では考えられない、あんなめちゃくちゃなことは。ビンの中から魔人ですよ、薬の中から魔人。ま、このあとは薬事法の縛りも厳しくなって規制を受けていくんですけどね

 最初は、「ちちん!!!ブイブイ!!」というのが駄目になったんです。魔法じゃないんだからと。それで、「だいじょーV!!」というのが次に駄目になって…。

アルチュール・ランボーでウイスキー?

浜野 製作費から考えると。

中島 もうすごかったですね。

浜野 ねえ。カリフォルニア州知事さんを。

中島 あの人1人に相当なお金を払ってたんじゃないでしょうか。

 僕がやったものじゃないですけど、ボーイ・ジョージに西遊記の三蔵法師を演じさせておいて缶チューハイを宣伝した宝酒造さんですとかね。サントリーさんも、ウイスキーの宣伝ですけど砂漠の真ん中で大道芸人たちがサーカスみたいにやってる、それが詩人のアルチュール・ランボーのイメージだ、っていうような。

 それが商品にどう関係あるの、というものですよ、こういうのはみんな。そこへいくと今は判りやすいですよ、小雪さんがハイボール作って、「ウイスキーがお好きでしょ」ってね、やるのですから。現実に即しています。ところが1980年代にはもっともっと、イメージに飛躍がありました。

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