メディアの巨匠と気鋭たちに、浜野保樹さんが会いに行くシリーズの第4弾。今回の対談相手は現代日本を代表するテレビCMの作り手・中島信也さんだ。
日清カップヌードルの「hungry?」、ホンダ、ステップワゴンの「こどもといっしょにどこいこう。」、本木雅弘と宮沢りえが演じる時代劇風の「伊右衛門」(サントリー)など、「ああ、あの」と誰もが思い出す名CMの数々を世に送り出してきた。
武蔵野美術大学を出て東北新社に入社し、以来同社一筋で26年という中島氏。「サラリーマン」と「創造力」という、本来結合しないはずの両極が結びついた稀有な実例でもある。
その枯れないイマジネーションはどこから来るのか? メディアが土台から激変するいま、CMはどう変わり、あるいは変わらないのか。浜野さんが口火を切る。
(司会・構成=谷口智彦 明治大学国際日本学部客員教授)
浜野 僕、中島さんにお願いしたいと思ったのは、今、インターネットや電子出版の登場・普及とともにメディアが大きく変わっている、この状況をどう見ておられるかです。
これまでの広告媒体というと、俗に「4マス」という、新聞、雑誌、テレビにラジオの4大マス媒体が主流だったでしょう。でもそこでの広告収入が5年連続落ちている。こんな状況で、広告は先行きどうなるのか。我々を取り巻くメディア環境それ自体の激変でもあるわけだから、CMも影響を受けないわけはない。まずはそこから中島さんにお聞きしたいのです。
「4マス」の衰退、ネットの台頭
ここで中島さんがとても適任だと思うのは、ご自身クリエイターであり、経営者でもある。――この、「経営者でもある」というところから、インターネットの広告が4マスのラジオを抜き、雑誌を凌駕して、とうとう新聞広告を追い抜いてしまったという状況をどう見ておられるか、お話いただけますか。