政権が崩壊して間もないシリアで、クリスマスツリーが燃やされる事件があり、抗議デモが起こった。参加者らは、イスラム教主義の新政権に対し、少数派保護の措置を求めている。一方、政権を倒した武装各組織は、解散して国防省の下に統合されることで合意したと報じられている。
放火事件があったのは、シリア中部のキリスト教徒が多数派の町スカイラビヤ。ソーシャルメディアに投稿された動画には、主要広場でクリスマスツリーが燃えているのが映っていた。
バッシャール・アル・アサド政権を倒した主要勢力「ハヤト・タハリール・アル・シャーム(HTS、「シャーム解放機構」の意味)」は、この事件で外国人戦闘員を拘束したと明らかにした。
HTS側は、宗教的・民族的に少数派の権利と自由を守ると約束した。
放火事件に対する抗議は、24日には首都ダマスカスの一部にも広がった。
同市カッサ地区の通りでは人々が、「シリアは自由だ、シリア人でない人は出て行け」などと、外国人戦闘員を批判する声を上げた。
一方、同市バブ・トゥーマ地区では、抗議デモ参加者たちが十字架とシリア国旗を持ち、「私たちは十字架のために魂をささげる」などと唱えた。
ジョルジュと名乗ったデモ参加者は、「以前のようにこの国でキリスト教の信仰に従って生きることが許されないのなら、私たちはもうここには属さない」とAFP通信に話した。
シリアには多くの民族・宗教集団が暮らしており、クルド人、アルメニア人、アッシリア人、キリスト教徒、ドゥルーズ派、アラウィ・シーア派、アラブ・スンニ派などがいる。同国民の大半はスンニ派となっている。
武装各組織が「国防省」に統合へ
HTSが今後、シリアをどう治めていくのかは、いまだ不透明だ。
今月初めにダマスカスに攻め入った際には、HTSの指導層は、すべてのシリア人のためのシリアを建設すると述べた。
国営サナ通信が暫定政権当局の発表として伝えたところでは、HTS指導者のアフメド・アル・シャラア氏は「革命各派」との間で、「すべての組織を解散させ、国防省の傘下に統合する」ことで合意したという。
統合されるという「すべての組織」が、どのグループを指しているのかは明確ではない。
ムハンマド・アル・バシール首相は、国防省は旧反体制派の戦闘員らも含むように再編されるとしている。
シリアにはいくつもの武装グループがあり、HTSと対立するグループや、HTSとの関係があいまいなグループもある。
HTSは依然として国連、アメリカ、欧州連合(EU)、イギリスからテロ組織に指定されている。ただ、外交面で変化が進んでいる様子もみられる。
アメリカは20日、HTS側との会合のあと、HTSの指導者アル・シャラア氏の拘束にかけていた1000万ドル(約15億3600万円)の報償金を廃止した。