特別対談企画「出口さんの学び舎」

2017年5月17日

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人工知能にやらせなきゃいけないのは、人にはできないこと

出口:僕が素人なりにシンギュラリティが起こらないと思っていたのは、人間の脳の活動の中で意識できる領域が少ないこと。全体の2~3割っていうじゃないですか。

池谷:うーん、もっと少ないと思いますよ。

出口:1割くらいですか?

池谷:具体的に何割って計算できないですけど、とんでもなく少ないです。1割もないはずです。

 

出口:コンピュータに人間の脳と同じ働きをさせようと思ったら、結局脳の活動全部を教えないといけないけれど、無意識の部分は入れようがありません。

池谷:そうですよね。

出口:意識できる部分だけを入れたところで、人間の脳の代わりはできないよね、と思ったんです。

池谷:確かに、できないですね。

出口:囲碁でいえば、ルールを全部教えて、過去の名人戦まですべて写真で覚えさせ、データを入れて、その中でお互いに対局させて強くなるんですよね。

池谷:そうです、そうです。

出口:無意識の部分のデータを入れることができないなら、シンギュラリティなんて起こるわけないじゃん、と思ったんです。

池谷:なるほど。そうかもしれません。ただ、意識できない部分も、実は、科学的に記録することはできますよね。

出口:つまり脳波とか?

池谷:そうそう。脳波がひとつの例です。MRIで撮ってもいいですし、電極を挿して直接記録してもいい。無意識の活動を人工知能に入れ込むことができます。

出口:でも、全部入れ込むことはできるんでしょうか?

池谷:今の技術では、全部は無理ですね。そこで思うのです。こうした試みには何か欠点があると。つまり、先ほどからの議論は、「人工知能に人の真似をさせよう」という考えがどこかにあると思うんですよ。それはたぶん間違っていて、僕は全部を入れる必要はないと思います。もし本当に、人の真似をさせたいのなら、人同士が本物の人間を出産したほうがいいわけで。

出口:はい、はい。実物ができますね。

池谷:つまり、人工知能にやらせなきゃいけないのは、「人真似」でなく、「人にはできないこと」です。

 

出口:要するに、複雑な計算を速くさせるとか、そういうことですよね。

池谷:そこです! 人工知能がやっているのは、結局、計算です。今はシェイクスピア風の詩を作ったり、レンブラント風の油絵も描きますが、その中身は計算です。計算でできるものは人工知能のほうが優れている。ただ、人間の脳の無意識の部分まで入れること、いかなる場合でも必要あるのだろうかという思いがあります。

出口:なるほど。

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