オトナの教養 週末の一冊

2017年4月28日

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 就職活動でも結婚活動でも、昨今まず求められるのが自己分析である。しかし、私たちは「自分」を知っているのだろうか? そもそも「本当の自分」などというものが存在するのだろうか?

 自己分析してわかる「自分」、意識に上る「自分」は、脳の活動という巨大な氷山の一角に過ぎず、大部分は水面下に隠れていて意識に上らない。脳科学者たちは近年、そう主張するようになった。

 本書の言葉を借りれば、「自分が見聞きするもの、やること、考えること、信じることさえも、意識のあずかりしらない脳の活動によって決まる」というのだ。

 急速に進歩しつつある脳科学の知見をもとに、脳と「自分」との関係を、実際にあった事件や実験を織り交ぜながら、深く考察したのが、本書である。

「名前の最初の文字が同じ夫婦」は多い!?

『あなたの知らない脳──意識は傍観者である』
(デイヴィッド・イーグルマン 著、大田直子 翻訳、早川書房)

 著者のデイヴィッド・イーグルマンは、スタンフォード大学准教授を務める神経科学者。英米でベストセラーになった本書(原題「INCOGNITO」)をはじめとする著作のほか、テレビ番組The Brain with David Eaglemanのプレゼンターも務める。

 読者の興味をそそるような有名人のゴシップやテレビドラマのなかの会話に出てきそうな「トリビア」ふうの話題を散りばめつつ、科学的な説明を積み上げていく手法は、さすがだ。

 たとえば、潜在的な偏見や無意識の自己愛(「潜在的自己中心性」)のおよぼす影響について、こんな話がある。

<友だちのジョエルにばったり会って、彼が生涯の恋人としてジェニーという名の女性を見つけたと話してくれたとしよう。それはおかしい、とあなたは思う。友人のアレックスはエミーと結婚したばかりで、ドニーはデージーにぞっこんなのだ。この同じイニシャルのペアには何か意味があるのか? そんなばかな、とあなたは断定する。生涯を誰と過ごすかというような人生の重要な決定が、名前の最初の文字のような気まぐれに影響されるはずがない。>

 しかし、これは偶然ではない、と著者はいう。

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