オトナの教養 週末の一冊

2017年3月24日

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 ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックという二人の若者がDNAの二重螺旋構造を見つけた物語は、発見から15年後の1968年にワトソンが綴った『二重螺旋』によって、あまりにも有名な”神話”になった。

 訳者の言葉を借りれば、そこに描かれていたのは、「いまだ第二次世界大戦の爪痕の残る欧米を舞台とし、生命科学の景観を変えることになる発見をめぐるドラマ」だった。

見つかったクリックの書簡類

『二重螺旋 完全版』
(ジェームズ・D. ワトソン 著、アレクサンダー ガン, ジャン ウィトコウスキー, 編集、青木薫 翻訳、新潮社)

 ワトソンの著作が刊行されておよそ半世紀。新たに編集されたのが、本書『二重螺旋 完全版』(原題 THE ANNOTATED AND ILLUSTRATED DOUBLE HELIX)である。

 この「注釈・図版入り版」が生まれるきっかけとなったのは、編著者であるアレクサンダー・ガンとジャン・ウィトコウスキーによる序文に書かれているように、シドニー・ブレナーがニューヨークのコールドスプリングハーバー研究所文書館に寄贈した書類のなかに、紛失したと思われていたクリックの書簡類が見つかったことだった。

 ブレナーは、分子生物学で多大な貢献をし、線虫をモデル生物とした研究で2002年のノーベル生理学・医学賞を受賞したイギリスの生物学者である。そのブレナーが、ケンブリッジで20年間クリックと同じ研究室を使ううちに、クリックの手紙が紛れ込んだようだから目を通してみてはどうか、と勧めたのだ。

 ジェームズ・ワトソンが名誉所長を務めるコールドスプリングハーバー研究所で要職にあるアレクサンダー・ガンとジャン・ウィトコウスキーは、ブレナーの勧めに応じてコレクションを精査し、クリックが他の人たちとやりとりした手紙を見出した。

 <それらの手紙は、クリックとジム・ワトソンがケンブリッジで、モーリス・ウィルキンスとロザリンド・フランクリンがロンドンで、DNAの構造を調べていた時期に書かれたものだった。>

 <五十年ほど前に紛失した(クリックによれば「有能すぎる秘書が捨ててしまった)それらの手紙は、一九六〇年代の半ばになって分子生物学という新しい分野に注目しはじめた科学史家たちの目を逃れていたのである。これらの手紙は、DNAの構造解明に至る一連の出来事の成り行きについて――とりわけ、重要な役割を演じた人たち相互の個人的な関係について――新たな光を投げかけるものだった。>

 クリックの書簡類の発見は、ワトソンの『二重螺旋』にも新たな光を投げかけることになった。

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