ロンドンの中心部で3日起きたテロで英国は「恐怖と怒り」に満ちあふれているが、海の向こうからトランプ大統領がテロ対策に取り組んでいるカーン・ロンドン市長の発言にツイッターでいちゃもんを付けた。これが意味をはき違えた的外れの批判だったため、英国ではトランプ氏に対する反感と嘲笑が巻き起こっている。
因縁の不仲
トランプ氏はロンドンのテロが起きた後、相次いでツイート。「われわれは賢く、用心深く、そして強くなければならない」と述べ、安全確保のため大統領が求めている「一部イスラム圏からの渡航禁止」の大統領令を裁判所が認めるよう要求した。
トランプ氏は選挙期間中からイスラム教徒の入国禁止を主張してきており、ここまでは持論を展開しただけで、問題はなかった。しかしその後のツイッターはひどい思い込みによるものだった。
同氏は「少なくとも7人が死亡し、48人も負傷しているのに、ロンドン市長が警戒する必要がないと言ってるなんて」とカーン市長に噛みついた。しかしこれは、とんでもない的外れの批判。
市長の発言はBBCとのインタビューでのもの。市長はテロを「臆病で野蛮」と非難した後、テロの結果、「市内に警官や治安部隊が増強されるが、怖がることはない」と市民を安心させることを意図した発言だった。これをトランプ氏は「テロに警戒する必要はないと市長が発言した」と思い込んでツイートしてしまった。
カーン氏のオフィスは声明を発表し「トランプ氏の故意に誤った情報に基づいたツイートに返答するより、もっとやるべき重要なことがある」と皮肉り、まともに相手にしないという大人の対応を見せた。
故意かどうかは別にして、トランプ氏の思い込みによる発言や怒りは枚挙にいとまがない。「オバマ前大統領がニューヨークのトランプタワーを盗聴していた」というものから、発生もしていないのに「昨日のスウェーデンでテロ」と言ってみたり、と“妄想”のような発言も多い。
しかし今回のカーン氏批判には伏線がある。カーン氏は昨年、イスラム教徒として初のロンドン市長に当選した。トランプ大統領が選挙期間中に、イスラム教徒の米入国禁止を主張した際、カーン氏に配慮したのか、同氏は例外と述べた。
これにカーン氏は「トランプ氏はイスラムに対して無知」と一蹴。トランプ大統領が実際に一部のイスラム教徒の入国禁止を盛り込んだ大統領令を出した時は「恥だ」と反発し、トランプ氏が温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」から脱退する決定を下したことをも厳しく非難していた。
自分への批判には異常なほど敵意を示すトランプ氏が市長の発言に思わず反応したというのが真実かもしれないが、ゴア元副大統領はテロ事件を受けて市民をまとめようとしている市長を批判するような時ではない、とトランプ氏に苦言を呈している。