WEDGE REPORT

2017年5月22日

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 トランプ米大統領による連邦捜査局(FBI)のコミー前長官の解任以降、「ロシア疑惑」をめぐって事態はめまぐるしく動いた。鮮明になったのはトランプ氏に対する疑惑と不信が深まり、大統領弾劾の要求が高まったことだ。同氏は先進7カ国(G7)サミットから帰国後、人事刷新を行って乗り切りを図りたい意向だが、その思惑とは逆に捜査に拍車がかかるのは必至。

決定的な証拠で“墓穴”

(Mark Wilson/Getty Images)

 5月9日のコミー氏の解任後に起きた一連の展開はまるでローラーコースターのよう。大統領が前の補佐官フリン氏のロシア疑惑をめぐる捜査をやめるようコミー氏に圧力を掛けたことが明るみに出たのをはじめに、ロシア外相らとの会談で、テロ関連の極秘情報を漏らしていた事実も発覚した。

 さらに司法省が大統領に反旗を翻し、ロシア疑惑捜査の特別検察官にロバート・モラー元FBI長官を電撃的に任命。特別検察官の任命は、ホワイトハウスが強く反対していたもので、トランプ氏は身内の造反に強い衝撃を受けた。

 追い打ちをかけるように、FBIが大統領に近い高官を重要参考人として捜査しているという衝撃的なニュースも報じられた。

 トランプ氏がフリン前補佐官に対する捜査を終了するようコミー氏に要求したというのはニューヨーク・タイムズが特ダネで報じた。これはコミー氏が残していたメモに基づく報道で、2月14日にホワイトハウスで行われた大統領とコミー氏による2人だけの夕食会の時だったという。

 大統領はこの報道を否定した上、得意のツイッターで「コミー氏はメディアに情報をリークする前に私との会話のテープがなかったことを願った方がいい」と録音テープの存在を仄めかして恫喝した。大統領によると、コミー氏はこの会談で、FBI長官の職にとどまりたいと訴えたとされ、こうした言動があったことを示唆することで、同氏をけん制しようとしたと受け取られている。

 しかし、大統領がフリン氏の捜査の終結を要求し、録音テープの存在をコミー氏脅迫の材料に使ったとすれば、この一連の言動は明らかに圧力を掛けて捜査を妨げようとした「司法妨害」に当たり、弾劾に相当する重大な違法行為となる。

 焦点はこの録音テープが実際に存在するのかどうかだ。ニクソン元大統領のウオーターゲート事件では、大統領執務室での会話が自動的に録音される仕組みとなっており、元大統領と側近による事件もみ消しの謀議が白日の下にさらされた。この事実が決定的な証拠となってニクソン氏は弾劾に至る前に大統領辞任に追い込まれた。

 トランプ大統領やその側近がこのウオーターゲート事件の先例にすぐに気付いただろうことは想像に難くない。大統領はテープの存在についてコメントを拒否、「コミー氏には正直でいてもらいたいだけだ」と正面から答えていない。録音テープが決定的な証拠になることを恐れたためと見られているが、テープの存在を仄めかしたのは自ら“墓穴”を掘ったことにもなる。

 ウオーターゲート事件以来、大統領執務室での会話や、大統領の電話のやりとりを録音していた大統領はいなかったとされている。何らかの事態が発生した時、裁判所などからテープの提出を求められる事態を避けたかったからだ。

 しかしトランプ氏のビジネス上の元部下らによると、同氏が商談や電話の会話を録音していたこともあったようで、録音テープが存在している可能性もある。弾劾の要求を強めている野党民主党の議員は既に、ホワイトハウスにテープの提出を求めている。

 この録音テープとは別にもう1つの焦点はワシントン・ポストが報じたもので、FBIが重要参考人として捜査しているトランプ氏側近のホワイトハウス高官は誰か、ということだ。

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