WEDGE REPORT

2017年6月30日

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木寅雄斗 (きとら・ゆうと)

Wedge編集部

 日本文化の象徴、ニシキゴイ。見る人の目を楽しませようと、全国各地で放流が行われている。だがその安易な考えの放流は、生態系破壊や感染症蔓延など、不可逆の事態を招きかねない。

ニシキゴイは本来の自然には存在しない“観賞魚”だ
(写真・MARY DIMITROPOULOU/EYEEM/GETTYIMAGES)

 富士川水系の一つ、荒川。山梨県甲府市を南北に貫く一級河川だ。その支流、貢川(くがわ)の堤防から水面を眺めると、色鮮やかなニシキゴイが優雅に泳ぐ姿が目についた。遊歩道に設けられた掲示板には、ニシキゴイを川に放つ小学生の写真。こののどかな場所が、ゴールデンウィーク中に起こったインターネット上の「炎上」の舞台となった。

 5月2日、NPO法人「未来の荒川をつくる会」が貢川に300匹のニシキゴイを放流した。地元の小学生53人がこのイベントに参加し、甲府市長や国会議員も立ち会った。山梨日日新聞など地元メディアも微笑ましいイベントとして好意的に報道した。同NPOが開催したニシキゴイの放流は今回で9回目だ。これまで通りであれば、ささやかな地方のイベントとしてお茶の間を和ませて終わっただろう。

 しかしこの後、山梨日日新聞電子版に記事が掲載されたことをきっかけに、ニシキゴイ放流の是非を問うインターネット上の書き込みが相次いだ。その多くは、ニシキゴイが環境に及ぼす悪影響を懸念するものだった。

「ニシキゴイ放流は論外だ」
専門家が口をそろえる理由

 ニシキゴイはコイを品種改良して生まれた観賞魚であり、そもそも自然環境には存在しない。

 コイそのものも大きな問題を孕(はら)んでいる。IUCN(国際自然保護連合)が定める「世界の侵略的外来種ワースト100」のうち、魚類は8種。そこにコイはブラックバスなどと並び指定されている。ユーラシア原産のコイは世界各地に広まっており、北米のミシシッピー川や五大湖では中国産のコイが繁殖して生物多様性を脅かし、重大な問題になっている。オーストラリアではコイにより年間400億円の経済損失が発生しているとの報道もある。

 もちろん、日本の自然環境にとってもコイの危険性は他人事ではない。コイの生態に詳しい国立環境研究所の松崎慎一郎主任研究員は「コイは自然環境に甚大な影響を及ぼしかねない」と指摘する。

 一つは生態系への影響だ。コイは食欲旺盛で、在来魚の餌である貝類や水棲昆虫、水草の芽を食べる。また水底から餌を探す際に泥を巻き上げ、日光をさえぎってしまうため、池や沼では水草を枯らしてしまうことが松崎氏の実証実験で示唆されている。また成体になれば目立った天敵もおらず、長寿のため(一説には100年以上生きるとされる)、長期にわたって影響を及ぼす可能性が指摘されている。

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