明治文壇随一の偉才のもっとも身近にいた最高の知性のメモワール。 鴎外、漱石、透谷、敏、藤村、眉山、美妙……、 明治の青春が生きいきと甦る。
英文学者・随筆家の馬場孤蝶が同時代の文学者たち――鴎外、漱石、透谷、藤村、上田敏、山田美妙らの人物スケッチ、思い出を綴った随筆集。とりわけ交遊の深かった斎藤緑雨、樋口一葉についての文は、彼らの文学を知るうえで欠くことのできない第一級の資料である。 また、本文に引用された一葉と孤蝶との往復書翰からは、一葉の「恋人」に擬せられた二人の微笑ましい交遊ぶりが窺える
英文学者、翻訳家、随筆家、慶応義塾大学教授。本名は勝弥。1869(明治2)年、高知県生れ。土佐藩士・馬場来八(らいはち)の子、自由民権運動家・馬場辰猪(たつい)の弟。明治学院を卒業、島崎藤村、北村透谷、上田敏らと「文学界」を創刊し、詩や小説を発表する。評論活動のほかトルストイの『戦争と平和』(初訳)など多数の翻訳を手がける。1940(昭和15)年没。著書に『近代文芸の解剖』(広文堂書店)、『孤蝶随筆』(新作社)、『野客漫言』(書物展望社)、『明治の東京』(社会思想社・現代教養文庫)他多数。