<好評4刷>(2006年10月)
「誰からも愛されないのに、自分はどうして生きているんだろう?」
「自分はどうして生き続けようとして食べるんだろう?」
若者を中心に摂食障害が広がりを見せている。文明の進化は、生理という基本的部分を徐々に狂わせつつあるのだ。
自分の存在の確かさや意味を、自己と他者との関係性の中から見出さざるを得ない人間。〈食〉もまた、きわめて観念的・社会的なものである――だからそれは、ときに狂おしいかたちをとる。
空腹を満たすのか、それとも空疎な心を満たすのか? 哲学者・鷲田清一が〈食〉の現在を通して、人間の心の闇と転換期の文明のあり方をあぶり出す。
その他に、大平健(精神科医)、山極寿一(人類学者)、中沢新一(宗教学者)の論考を収め、人間の〈食〉の足どりをたどりながら、その問題点を多角的に考察する。
また本書では、三國清三(料理人)と松井孝典(地球物理学者)を迎え、〈食〉の現場で起こっていることを検証し、「食べる」という行為の意味を、ディスカッションによって明らかにしていく。