2004年、大型台風と大洪水がモンスーンアジアを直撃した。きわめつきは、中越地震とスマトラ沖地震によるインド洋の大津波。15万人以上という史上空前の死者を出し、被災者は数百万人に達する未曾有の大災害となった。これらは、これからやってくる巨大災害の世紀の前兆にすぎないのだろうか--。
2004年8月、仙台の住宅地に植えられたサルスベリの木が、いっせいに咲き誇っていた。「サルスベリの花が咲き誇る年は災害が多い」との言い伝え通り、それから数ヶ月の間に日本列島を見舞った台風と集中豪雨、そして新潟中越地震、インド洋の大津波による大災害は記憶に新しい。言い伝えは本当だった。
サルスベリの花粉の化石を分析すると、氷期から間氷期へと地球の気候が急激に温暖化する激動の時代に、サルスベリが大繁栄していたことがわかる。そしてそれは、大災害の多発する激動の時代でもあった。
21世紀は地球温暖化の時代である。この時代に何が起こるかを予測するには、気候変動を考察しなければならない。気温の上昇がどのような地域差と時間差を持って人間生活を襲うかを解明することなくして、21世紀の人類文明の安定的発展は望めない。必要なのは20年先、50年先の近未来予測である。
近未来の気候変動を科学的に予測する「ジェオゲノム(地球の遺伝子)・プロジェクト」とは何か。その全貌がいま、明らかになる--