使えない上司・使えない部下

2017年9月1日

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吉田典史 (よしだ・のりふみ)

ジャーナリスト・記者・ライター

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。
主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、
震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

 今回は、コヤマドライビングスクールの小山甚一社長を取材した。1972年に取締役に就任すると、業界の体質を変えるような改革を次々と試みた。業績を拡大させたことが認められ、1983年に社長に就任する。1985年に業界で先駆けて、女性の指導員を採用するなど、時代を先取りした施策を進める。

(PrettyVectors/iStock)

 しかし、急進的な改革を否定するオーナーである父に解任され、副社長に「降格」する。97年に社長に返り咲くと、現場の声を反映する経営を進め、業績を拡大させる。今や、年間の教習生約3万人となり、国内最大規模の教習所となった。

 小山社長にとって「使えない上司・部下」とは…。

上司にとっていちばん大切なのは、部下の脳みそを使うこと

 本来、「使えない社員」はいないと私は思います。ほとんどの会社員が、それなりに仕事をしているものです。その質や成果には多少の差があるのでしょうが、「使えない」というほどではないと思います。 「使えない社長」や「使えない上司」がいるとするならば、社員や部下のことを「使えない」とレッテルをはり、自分だけで考え、ひとりで決めて進めてしまう人だと思います。

 上司にとっていちばん大切なのは、部下の脳みそを使うことです。社長にも同じことが言えます。500人の社員がいるならば、500の脳があるのです。社員たちに考えてもらったほうが、はるかにいいわけです。

 ところが、社長ひとりで全部を仕切り、あらゆることを決めようとすることがあります。あれでは社員はやる気をなくし、育ちません。おそらく、業績は伸びず、ゆきづまっていくでしょう。伸びないと思います。

 社長業で大切なのは、人の育成だと思います。業績が伸びて、会社の規模があるレベルに達し、キープしないと、業績はやがてじりじりと下がる「じり貧」になってゆきます。少なくともそのレベルになるまで、社員を懸命に育てあげないといけない。残念ながら、それをしない社長は実際にいるのです。

 私がそのような社長と接すると、社員のことを信用していないように感じます。「あんな社員はダメだ」と乱暴に決めるつける人もいます。自分が経営する会社の社員のことをそんなに悪く言ってどうするの?と思うのですが…。私が社員ならば、辞めてしまうかもしれません。

 社長にとって、社員は鏡です。上司と部下の関係も同じです。自分と同じようなレベルの人が、社員や部下として目の前にいるのです。社長と労働組合の関係も似ています。経営者や会社に対し、戦闘的な労組があるでしょう。そのような会社の社長は、「あの労組の野郎は、何もわかっていない」というスタンスをとっています。だから、労組も過激になるのです。

 当社の場合は、社員たちがよく考えてくれます。委員会制度があり、経営に関することや女性の働きやすい職場づくりなどを話し合い、大量の提案を出してくれるのです。日本初の英語教習や障がい者教習、赤色のBMWを使った高速教習などは、社員たちのアイデアによるものです。

 社長である私の脳は、ひとつしかない。社員の脳をいかに使うか…。そのことを考えるようにしています。ただし、会社として守るべきことはあります。たとえば、業界のルールを逸脱するような案ならば、認めることはできません。一線を踏まえているならば問題はないと思います。

 結局、社長と社員、上司と部下の関係は対話でしか成り立たないのです。意見などを言ってもらい、話し合う。その姿勢が大切です。「俺の言うことを聞け!」と命令をしているだけでは、うまくいかない。それこそ、「使えない社長」や「使えない部下」になってしまうでしょう。

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