WEDGE REPORT

2017年9月22日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)など。

 日本からおよそ3時間の飛行で北マリアナ諸島の一角を担うサイパン島を眼下に望むことができる。サイパンは中国が対米戦略上の防衛線と定めている、伊豆諸島を起点に小笠原諸島、グアム、パプアニューギニア、パラオに至る「第二列島線」の要に位置する。つまり、中国、米国、そして日本のそれぞれが神経を尖(とが)らせる戦略上の最前線、それがサイパンなのである。

 Wedge8月号でレポートしたパラオに次いで、中国の民間資本という名の〝占領〟が進む人口およそ5万8000人のサイパンに飛んだ。

 1980年代、サイパンは日本人観光客や接待ゴルフのサラリーマンらで溢れていた。その象徴が88年に開業した日本航空系列の「ホテル・ニッコー・サイパン」。バブル経済を背景とし、313室すべてがオーシャンビューという贅(ぜい)を尽くしたホテルだった。巨大なショッピングモールを従えての賑々しいオープンだった。

 しかし、時は過ぎた。2005年10月には、日本航空がサイパン便を廃止。00年頃から減少し続けていた日本人観光客は、日本航空のサイパン便廃止が決定的となりさらに減少する。偉容を誇った「ホテル・ニッコー・サイパン」は韓国のコングロマリット「E−LAND」グループに買収されたものの、ショッピングモールは打ち捨てられたまま。南洋特有の肉厚のある植物に覆われ、錆び付いた姿はサイパンにおける日本の存在を暗喩しているかのようだ。サイパンの日系ホテルやゴルフ場のほとんどが今や韓国資本に取って代わられている。

 しかし現在、その韓国資本を蹴散らすように島を席巻しているのが中国資本だ。

不法就労を摘発するも徹底できない理由

 「ほら、見えてきました。あそこが建設中のホテルですよ」

 地元のガイドが指差す先に目をやると高層ビルの建設現場が見えてくる。さらに近づくと、建設現場に隣接する白亜の建物がはっきりと見えてきた。その派手派手しい金色の飾り付けがされた建物こそが、今年サイパンで開業したカジノ施設「インペリアル・パシフィック」である。カジノを運営しているのは、中国資本の「インペリアル・パシフィック・インターナショナル・ホールディングス」。

今年7月にオープンした中国カジノ「インペリアル・パシフィック」。隣ではサイパン随一の高層ホテルの建設が進む

 規制強化の影響からマカオでの事業の収益が頭打ちの中、狙いを定めたのが手つかずの島、サイパンだった。およそ8000億円近い資金を投下する同社は、いち早くカジノをオープンさせ、それに付随するサイパンで最も高層の25階建てホテルを現在急ピッチで建設をしているところである。

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