世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年12月7日

»著者プロフィール

 英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのギデオン・ラックマンが、11月6日付け同紙に「中国、トランプと北朝鮮の悪夢:中国は半島での戦争に引きずり込まれうる」との論説を寄せ、北朝鮮問題が中国にとっても頭の痛い問題であると論じています。論旨は次の通りです。

(iStock.com/Rost-9D/Ognjen18/Ismailciydem)

 西側ではトランプの北の脅威に「火と怒り」で対応するとの警告に焦点が当てられているが、北朝鮮危機は中国にも大きな危険をもたらす。もし戦争になれば、中国は文字通り前線国家になり、核の灰、難民流入、地域での力の均衡の変化に直面する。

 この厳しいリスクは中国の専門家の中に驚くべき種類の多くの意見を生み出している。「中国と米国は北朝鮮に対する共同軍事作戦をすべし」と言う人もいるし、「米国の政策は災難をもたらす。米国とは公に断絶すべし」という人もいる。

 中国の公的立場はこれら二つの策を避け、習近平政権は「凍結のための凍結」(北は核開発を凍結し、米は軍事演習を凍結する)政策で外交を再開することを求めている。これは良い考えに聞こえるが、北朝鮮も米国もその方向に行く気はない。

 その現実を踏まえ、中国は他の過激な代替案も考えざるを得なくなっている。ある高官は、「北制裁に同意し、平壌への影響を失った。対米関係を悪くしても、金正恩政権との関係を再構築すべし」という。しかし中国の学者の中には、全く違う意見の人がいる。彼らは、核の北朝鮮は韓国、日本、米国への脅威であるのみならず、中国への脅威でもある、戦略的には、日韓の核武装につながりかねない、としている。

 中国の専門家は、北の核実験の失敗や寧辺核施設での事故が深刻な環境破壊につながることを心配している。北による核兵器の使用は中国に危険をもたらす。

 そういうわけで中国の専門家の中には、中国が米国との共同軍事作戦で金政権を倒し、核兵器を確保すべしという人がいる。こういう戦略は中国に事態の進展を傍観するのではなく、中国の安全保障のために積極的な措置をとることを可能にする。米国と協働すれば、戦後秩序について「大取引」、グランド・バーゲンを成し遂げられるかもしれない。統一朝鮮からの米軍撤退の保証、台湾の地位や南シナ海問題での譲歩獲得もありうる。しかし米中共同作戦は危険を伴う。北朝鮮が核または通常兵器で報復に出る可能性がある。

 こういうことを考慮し、もしトランプ政権が北を攻撃すれば、中国は国境を守り、難民を押しとどめるために50キロだけ北朝鮮に入ることを主張している人もいる。中国人の中には、米国の先制攻撃は日韓と米国との関係悪化につながり、米国の太平洋での影響力を壊し、中国の利益になるという人もいる。

 しかし、中国が紛争の局外に居れば、これに伴うコストもある。米国が中国の同盟国・隣国で戦争する中、何もできずに傍観者に見える事にもリスクがある。

 ワシントンでは北朝鮮には悪い選択肢しかないと言われるが、北京にとってもそうである。

出典:Gideon Rachman,‘China, Trump and the North Korean nightmare’(Financial Times, November 6, 2017)
https://www.ft.com/content/570b456a-c2d3-11e7-b2bb-322b2cb39656

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る