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2018年1月12日

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中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)などがある。

 家にいても息子夫婦や娘夫婦は働きに出ていていないし、香港のマンションの部屋は狭い。東京のような一軒家はほとんどなく、庭もない。だから、必然的に「外へ、外へ」と出ていかざるを得ないのだが、それが返って健康には功を奏している。マンションの敷地内にある小さい広場や公園、【前編】にも出てきた街市(市場)に行けば、必ず誰か知り合いがいて、老人同士の会話が弾む上、必然的に自分の足で歩くことになる。斜面に建つマンションだと階段が多いが、その上り下りだけでもかなりの運動量だ。

老人の「孤食」が少ない理由

 週末になれば、家族とともに、また飲茶に出掛けるという人がとても多い。香港の週末は、どこのレストランでも、5人以上の家族連れで満席だ。記念日でもないのに、10人以上でワイワイ食事している姿もよく見かける。土地が狭い香港では、両親と一緒に暮らしていなくても、実家の至近距離に住んでいるのが普通。週末は親孝行のため「一家で食事をすること」を前提に暮らしているという人もいる。だから老人の「孤食」が少ないのだ。いわば「週に一度は子どもが里帰りしてくれる」ようなもので、家族間のコミュニケーションがある。狭い土地でゴミゴミしているという印象もあるが、それが逆にいいことでもあり、こじんまりとしていて、古くからの付き合いやコミュニティが壊れないまま残っているのだ。

週末は家族で飲茶を楽しむ人が多い(iStock/ctktiger1018)

 中国でも家族や老人を大事にする習慣はあるが、中国の場合、農村から都市に出稼ぎに行けば、帰省できるのは1年に一度くらい。経済的、距離的な問題から、2~3年に一度しか親に会えないという人もいる。同じ都市に住んでいても、中国の都市は巨大なので、子ども夫婦の家は遠く、週に一度、親の顔を見に帰ることができない人も多い。中国でもマンション内に老人のためのサークルがあるが、急激に経済成長したことにより、建設工事のための立ち退きも多く、横丁が取り壊されたり、引っ越しを余儀なくされることによって、老人同士のコミュニティが断絶しているところもある。中国の公園でもダンスや太極拳をしている人はいるが、ひとりでポツンと椅子に座っている老人も少なくない。

 このように、とにかく香港の老人は誰かと会話していたり、誰かと一緒に食事をする機会が多いのが特徴といえる。これが精神的な健康の秘訣になっているといってもいいだろう。

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