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2018年1月12日

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中島恵 (なかじま・けい)

ジャーナリスト

1967年山梨県生まれ。新聞記者を経てフリージャーナリスト。主な著書に『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(ともに日本経済新聞出版社)、『爆買い後、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『なぜ中国人は財布を持たないのか』(日本経済新聞出版社)などがある。

 「毎朝ここに来るのが日課なんですよ。友だちの顔も見られて楽しいし、家にいてもつまらないから」

 香港の九龍公園は有名なペニンシュラホテルや観光地などにも近く、観光客も訪れる“都心のオアシス”だが、早朝、ここで太極拳しているのは地元の老人たちだ。70~80代を中心に男女数人が集まり、精神を統一して、ゆっくり動作している姿が目に飛び込んでくる。よく見ると、いくつものグループに分かれていて、それぞれに思い思いの服装で楽しんでいるようだ。

朝は公園で運動してから
仲間と飲茶に繰り出す

香港の公園は朝早くから老人たちでにぎわう(iStock/monkeybusinessimages)

 太極拳とは中国武術の一派で、東洋哲学の重要概念である太極思想を取り入れた拳法。武術ではあるが、健康法として取り入れている人が多く、血流をよくする、内臓のバランスを整える、筋力アップ、リラックスできる、などのメリットが指摘されている。ほかにも、独特の音楽を流しながらダンスをする人、ひとりで鉄棒などの運動器具を使って身体を鍛えている人など、とにかく香港の早朝の公園は老人たちでにぎやかなのだ。

 彼らは運動で一汗流した後、それぞれの仲間と飲茶(ヤムチャ)に繰り出すのが「定番コース」になっている。飲茶はその名の通り、お茶を飲みながらシューマイやえび餃子などの点心を食べる広東地方独特の食文化。香港の飲茶は世界中の観光客を惹きつける魅力があり、主にランチで食べる人が多いが、香港や広東省では「早茶」(ジョーチヤ)といって、地元では朝から飲茶を楽しむ人もいる。

 老人たちにとっては、お茶や点心だけでなく、“おしゃべり”が楽しみの中心だ。円卓でそれぞれの顔を見ながら、思い思いの点心を注文。ここでのおしゃべりタイムが延々1~2時間は続く。会話の内容は息子や娘、孫の自慢話や家族の健康問題、他の友だちのウワサ話など、たわいないことだが、とにかく大きな声でよくしゃべる。「早茶」が終わったら自宅に戻るか、再び公園へ。あるいは麻雀に繰り出す人も……。

 香港の老人の行動に共通しているのは「適度な運動」と「コミュニケーション」、「ストレス発散」、そして、何といっても大事なのは「コミュニティ」が存在することだ。

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