2024年4月16日(火)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月1日

 リトワクは、昨年2月ウィルソンセンターから“Preventing North Korea’s Nuclear Breakout”と題する長文の論文を発表し、北朝鮮が米国を核攻撃できる能力を獲得する前に、交渉で北朝鮮の核開発の凍結を求めるべきである、と論じています。上記の論説は、その趣旨を踏まえたものです。

 リトワクの主張は、このまま放置すれば、北朝鮮は米国を核攻撃できる能力を獲得することになり、米国としてはこれを阻止する必要があり、これまでそのため制裁を強化してきたが、その効果は上がっていない、そうとすれば、米国としては交渉で目的を達成すべきである、ということです。そして、ここでいう凍結の対象は、あくまでも米国を攻撃する核・ミサイル能力です。

 北朝鮮はすでに日本を射程内に収めるミサイル、ノドン、テポドンを持っています。これらに核を搭載すれば、北朝鮮は日本を核攻撃できます。日本の安全保障に関する限り、このような兵器体系の凍結は考えられません。

 北朝鮮はこれらの兵器体系の廃絶に応じそうもないので、日本としては、これに対抗する手段、すなわち、ミサイル防衛とさらにできれば北朝鮮の基地攻撃能力の整備を図る必要があります。

 金正恩の元旦の南北の話し合いの呼びかけの意図には警戒すべきです。北朝鮮の核の脅威に対する見方は、米国と韓国で温度差があり、特に文在寅大統領は北朝鮮に融和的な態度を取りたがっています。平昌オリンピックは韓国が威信をかけた国家事業であり、金正恩は平昌オリンピックを梃子に、文在寅からできるだけ代償を取ろうと考えるでしょう。金正恩が米国と韓国の間に楔を打ち込もうと考えているのは確かであり、米韓は金正恩に付け込まれないよう、十分な警戒する必要があります。

 リトワクは「米韓の共同戦線」と言っていますが、日本も北朝鮮の核の脅威をまともに受けており、共同戦線は日米韓三国のものであるべきです。

 なお、リトワクが2月に発表した論文で述べている北朝鮮の“Nuclear Breakout”とは、米国を核攻撃できる能力の取得のことです。2月以降、北朝鮮はいくつものミサイル実験、核実験を行い、この能力は飛躍的に向上したと見られます。しかしマティス長官の判断では、北朝鮮は未だこの能力を獲得していません。したがって、北朝鮮の核攻撃能力を現状で凍結することには、米国にとっては大きな意味があるということになります。

  
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