米国のシンクタンク、ウッドローウィルソンセンターのロバート・リトワク上級副所長が、1月3日付けニューヨーク・タイムズ紙掲載の論説で、米韓は共同戦線を張って、北朝鮮に対し核開発の凍結を求めるべきである、と述べています。要旨は以下の通りです。
金正恩は元旦の演説で、核のボタンに言及すると同時に、南北の話し合いを呼び掛けた。
金正恩の呼びかけは、米韓が北朝鮮の核計画を現状で凍結し、情勢のさらなる悪化を防ぐための戦略で共同歩調を取る機会をもたらしている。
米政府は北朝鮮との話し合いの前提条件として北朝鮮が非核化に同意することを求めているが、金政権が続く限り北朝鮮が核兵器の廃絶に同意しないことを認める必要がある。
北朝鮮の指導部の最大の関心は生存であり、北朝鮮の行動はこの観点から見るべきである。
韓国は北朝鮮の挑戦的脅しには慣れており、最新のギャロップの調査によれば、国民の58%は北朝鮮の攻撃は無いと考えている。韓国国民が恐れている新しい要因は、米国政府の口上である。
文在寅大統領のジレンマは、金正恩が漠然とした半島の緊張緩和を提唱する一方で、米韓の共同軍事演習の中止、経済支援の増大といった具体的な譲歩を求めてくる可能性であり、そのような譲歩は米韓関係の緊張を高める。
金正恩の意図は警戒すべきである。話し合いの呼びかけは米大陸攻撃能力の獲得に必要な実験のための時間稼ぎかもしれず、経済支援を引き出すためかもしれない。あるいは米韓間に楔を打ち込むという戦略的考慮かもしれない。
米韓は金正恩の思惑に乗じられることなく、米韓の共同戦線で北の申し出に外交的に対処すべきである。
北朝鮮の核の野心を制約するための話し合いは、現在の危機を回避し、時間を稼ぐこととなろう。北朝鮮にとって核開発の現状での凍結は、具体的な経済的譲歩をもたらすとともに、金政権の生存戦略の中心である最小限の抑止の維持を可能にする。
制裁は金体制の政策を変えることはできなかった。考えられ得る唯一の短期的目的は、長年の同盟国が一緒になり、北朝鮮のミサイルと核の実験を凍結する合意を求めることであるべきである。
マティス国防長官は、北朝鮮は未だ米国を攻撃する能力は示していないと言ったが、これは未だ外交の窓が開いていることを意味する。しかしその窓は長くは開いてないだろう。
出典:Robert S. Litwak,‘A United Front Against North Korea’(New York Times, January 3, 2018)
https://www.nytimes.com/2018/01/03/opinion/united-against-north-korea.html