2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年1月5日

 ウォール・ストリート・ジャーナル紙が、11月29日の北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)実験を受けて、「北朝鮮に最大限の圧力:中国も米もまだ最もきつい制裁を課していない」との社説を同日付けで掲載、対北圧力強化を主張しています。要旨は次の通りです。

((iStock.com/xochicalco/VladimirSorokin)

 29日早朝、金正恩は新型ICBMを試射した。データによると、米本土全体に到達しうる。もし北朝鮮が弾頭技術を完成すれば、米国を核の人質になし得る。トランプ政権が、米国はこの脅威と共存できないというが、正しい。何をなすべきか。

 ピョンヤンはすでに極端な経済的、外交的圧力下にあるというのが通説である。しかし、現実には、国連も米国も昨年、幅広い制裁をかけ始めたにすぎない。中国は石油輸出その他の貿易で、ロシアは北の奴隷労働への支払いで、金政権を支持してきた。

 これらのライフラインを止めることが最優先事項である。9月、北がIRBMを発射した際、米はそのようにする安保理決議を提案した。しかし中露が抵抗し、米国は折れた。決議2375は石油輸出と労働契約を制限しただけであった。トランプ政権は安保理での全会一致を勝利であるとしたが、決議は多くのピョンヤンのライフラインをオープンなままにした。

 米国は制裁破りをしている中国の会社への制裁を延期し、中国の賛成票に褒賞を与えた。最近、財務省が丹東の4つの会社を金融関係のブラックリストに載せ、その延期は終わった。米政府は他の「第2次制裁」、特に銀行に対するものをまだ、控えている。

 中国の制裁実施は不完全である。中国の銀行は北朝鮮の会社の口座は凍結したが、制裁破りをしている中国の会社への融資をしている。8月の決議で石炭の貿易は全面禁止になったのに、中国は、石炭は引き続き輸入している。トランプ政権はこれを暴露できる。

 米国の対応は安全保障措置も含むべきである。韓国への戦術核兵器再配備も必要であろう。ピョンヤンに、同盟国への攻撃に対しては米本土へのICBM攻撃のリスクにもかかわらず、圧倒的に報復することを明らかにし、金正恩が誤算しないようにすべきである。THAADミサイル防衛レーダー、発射機の韓国配備で、中国に北朝鮮支持は結果を伴うという強いシグナルを送るべきである。先月、中国は韓国の文在寅大統領を脅し、THAAD配備を凍結させたが、米国は新しい配備に固執すべきであろう。

 米国と韓国は脱北者を増やすプログラムを強化すべきである。非武装地帯を超えた亡命兵士は韓国メディアに接して、脱北を決意したと言っている。中国が脱北者を受け入れ、韓国に送れば、その噂は北で広まり、国内を不安定にするだろう。中国の援助による北のレジーム・チェンジが戦争をしないで、北の脅威を終わらせる最善の道である。

 トランプ政権はその前任者より北の核計画を妨げてきたが、最大の圧力をかけているとは言えない。こういう措置は結局効果がないかもしれない。しかし代替策は黙認か戦争である。米国は金正恩を止めるために持てるすべての手段を使うべきである。

出典:‘Maximum Pressure on North Korea’(Wall Street Journal, November 29, 2017)
https://www.wsj.com/articles/maximum-pressure-on-north-korea-1511987125


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