サイバー空間の権力論

2018年1月31日

»著者プロフィール
閉じる

塚越健司 (つかごし・けんじ)

拓殖大学非常勤講師

1984年生。専攻は情報社会学、社会哲学。著書に『ハクティビズムとは何か』(ソフトバンク新書)、共編著に『「統治」を創造する』(春秋社)、など。TBSラジオ『荒川強啓デイ・キャッチ!』火曜ニュースクリップ担当としてレギュラー出演中(http://www.tbsradio.jp/dc/)。

 前回は閉じこもるインターネットと題して、2017年のインターネット世界の諸問題を論じた。中国やロシアだけでなく、アメリカにおいても分断が生じている今、本当の意味でつながりをインターネットが媒介する事は可能なのだろうか。そこで今回は、インターネットの「健全化」が望めるかどうか、最新の動向に着目して議論してみたい。

(iStock/MatiasEnElMundo)

自殺動画が投稿されたYouTubeとその対応

 2017年12月31日、アメリカの人気YouTuberローガン・ポール氏は、日本の青木ヶ原樹海で自殺した遺体の動画をYouTubeに投稿した。動画は衝撃的なもので、顔にモザイクはかけられていたものの、自殺した男性の遺体を写し、ポール氏が隣に立ってピースサインをしたり、話しかけて笑う、といった死者を冒涜する内容だった。ポール氏の動画に対しては、自殺をお金儲けに使った等の批判が世界中から殺到。批判を受けて投稿から1日で削除された。しかし1000万人以上の登録者がいるポール氏の動画は、削除されるまでに630万回以上再生された。

 ネット上の署名サイトでは、ポール氏のチャンネルを削除するべきだ、という提案に50万人以上が署名を寄せているが、YouTubeの対応は一部の広告プログラム(Google Preferred)をカットしたものの、原稿執筆時点でチャンネルそのものは削除されていない。ポール氏は騒動後すぐに謝罪の動画を投稿したが、その動画すらビジネスになるとして批判を受けた。なぜなら、YouTubeの動画は視聴数や表示された広告が収入となるからだ。ちなみにポール氏は他にも渋谷で交通ルールを無視した動画を投稿しておりその点も批判されているが、これらの動画も未だアップされたままである。

 こうした問題も影響してか、YouTubeは2018年1月、2007年に開始した「YouTubeパートナー・プログラム(以下YPP)」という投稿者の収益に関する制度の変更を発表した。YPPは動画に広告を掲載したり有料化することで投稿者が簡単に金銭を得ることを可能にしたプログラムであり、ポール氏もチャンネルが削除されない限りYPPを通して収入を得られる。

関連記事

新着記事

»もっと見る