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2018年2月4日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

 ボクシングの世界タイトル戦に3度挑戦したがチャンピオンにはなれなかった元プロボクサー葛西裕一氏(48)が、昨年9月に東京・用賀にボクシングフィットネス(カーディオボクシング)ジム「GLOVES」をオープン、経営が軌道に乗り、女性にも人気が出始めている。トレーナーとしても経験豊富な葛西氏は「ボクシングは現代人が抱えているストレスの発散にもってこいの運動で、ジムに来てもらえば女性でもその日のうちにボクシングができるようになるメソッドがある」と話し、プロボクシングで果たせなかった夢をビジネスの世界で実現しようとしている。

葛西夫妻。葛西裕一(かさい・ゆういち)氏。1989年にプロデビュー。92年にスーパーバンタム級の王座を奪う。94年にWBA世界ジュニアフェザー級王者に挑戦するが敗北。97年に3度目の世界戦に挑んだが敗れ、この試合を最後に引退。その後は帝拳ジムのチーフトレーナーとして4人の世界チャンピオンを育成、ボクシングのテレビ解説も務めた。神奈川県出身

「女性ファンを増やしたい」

 「本当はチャンピオンになって知名度を上げてからビジネスをやりたかった」と話すが、悔やんでも過去は戻っては来ない。現役時代の1990年代は後楽園ホールには「女性客が多く、辰吉丈一郎の熱狂的なファンとは別のファン層を引っ張って来ていた」と自慢するように、当時は女性にモテていた。その後、現役引退後も解説業とトレーナー業でボクシングの深みを伝えて来たつもりだが、外野席にいるだけでは「不完全燃焼」だった。もう一度、女性のボクシングファンを獲得する方法はないかと考えていた時に出会ったのが、シェイプアップにつながるエアロビクスとボクシングの運動を合体させたカーディオボクシングだった。

 「シェイプアップ効果を女性に認識してもらえて、若い世代のボクシングファン層を増やすことができれば、お世話になったボクシング界にも恩返しできる」と話す。リング上で果たせなかったチャンピオンなる夢を、ボクシングの女性ファンを増やすことにつながるビジネスの場で実現したいという熱い思いがある。まずは会員数を増やして用賀のジムを成功させることが第1ラウンドだ。

ボクシング復活の兆し

 最近は日本人の世界チャンピオンが何人も誕生し、昨年の大晦日には東京と大阪で5試合もの世界タイトルマッチが組まれるなど、ボクシング人気に復活の兆しがある。しかし、少子化の影響もあってプロボクサーの数は大幅に減少してきており、毎週のようにプロボクシングの試合が放映された1960年代の絶頂期と比べるとまだまだの感は強い。サッカーなどと比べて子供たちへ魅力が薄れており、ボクシング業界では危機感が広がっている。

 その中で、昨年の10月にロンドン五輪の金メダリストの村田諒太選手がWBA(世界ボクシング協会)ミドル級で世界チャンピオンになったことで人気の輪が広がってきている。村田選手がプロに転向する前にトレーナーを務めたこともある葛西氏は「ボクシングの魅力は殴って相手を倒すという荒らしいものだけでなく、どうやったら鋭いパンチを出せるかなど身体能力すべてに関係するエクササイズだ」と体験しなければ理解できない魅力を話す。

認知度を高める

 東急田園都市線用賀駅から数分の場所にある「GLOVES」を訪問すると、夕方には勤め帰りの人が汗を流しにやってくる。最新鋭の照明による演出やBGMに合わせた運動により、溜まったストレスを発散できるという。オープンして3カ月だが会員数は約150人で、男女比率は半々。年代は30~40歳代が多いという。

 代表を務める葛西氏は「マシンを相手にするフィットネスと比べて、カーディオボクシングはトレーナーと一緒にプログラムを組んで運動するので初心者でも入りやすい。日本ではまだなじみが薄いが、ほかのスポーツと比べて消費カロリーが圧倒的に高いというデータがあり、脂肪燃焼量が高いことから見直されてきている。まずは、ここに来れば非日常のボクシングを存分に楽しめるという認知度を高めたい」と既存のフィットネスとの違いを強調する。会員数は口コミなどで順調に増えており、近い将来は300人に増やしたい計画だという。

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