西山隆行が読み解くアメリカ社会

2018年3月16日

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西山隆行 (にしやま・たかゆき)

成蹊大学法学部教授

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て現職。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会)、『移民大国アメリカ』(筑摩書房)、『アメリカ政治』(三修社)、『アメリカ政治入門』(東京大学出版会)、5月に『アメリカ政治講義』(筑摩書房)が刊行予定。

 3月13日に、ペンシルヴェニア州南西部の第18選挙区で、連邦下院議員補欠選挙が実施された。この選挙は、共和党保守派で中絶反対派のティム・マーフィー議員が愛人に中絶を求めたことが明らかになって昨年10月に辞任したのを受けて実施された。

 この選挙区の地域では、2016年大統領選挙に際し、共和党のドナルド・トランプが民主党のヒラリー・クリントンに対して20%の差をつけて優位した。また、2012年の大統領選挙では、共和党のミット・ロムニーがオバマに対して17%の差をつけて優位した地域である。そのため、この選挙区では共和党が有利とみられてきた。にもかかわらず、民主党のコナー・ラムが共和党のリック・サコーンに対し僅差で勝利したのである。

ペンシルベニア州補欠選挙の共和党候補集会で演説したトランプ大統領。左はリック・サコーン氏(写真:AP/アフロ)

 トランプ政権が誕生して以降、トム・プライスが保険福祉庁長官に任命されたのを受けて辞任したジョージア州での連邦下院議員補欠選挙など、初期には共和党候補が勝利していた。だが、昨年11月のヴァジニア州知事選挙、12月のアラバマ州連邦上院議員補欠選挙に続き、今回の補欠選挙でも民主党候補が勝利した。保守的なアラバマ州の連邦議会上院議員選挙で共和党のロイ・ムーアが敗北した背景には、昨年の論稿で指摘したとおり、ムーア候補の性的なスキャンダルがあった(http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11192http://wedge.ismedia.jp/articles/-/11402)。しかし、ペンシルヴェニアの補欠選挙では共和党のサコーン議員自身にはそのような問題は存在しなかったことを考えると、今回の選挙結果が共和党とトランプ政権に与える衝撃は大きいといえるだろう。

中間選挙で民主党が多数を奪還する可能性

 今年11月には、中間選挙が行われる。既にテキサス州などでは候補者を選出する予備選挙が実施されているが、大半の地域で予備選挙が実施されるのはこれからである。今回の補欠選挙は、中間選挙に向けて、二大政党に重要な教訓を与えたと考えられる。

 今年の中間選挙では、連邦議会上院は全100議席のうち35議席が改選を迎える。うち33が通常の改選部分であり、その現職は23人が民主党、8人が共和党、2人が民主党系無所属である。それに加えて、ミネソタ州とミシシッピ州で補欠選挙が行われる。現在の上院では共和党が51議席、民主党系が49議席を占めていることを考えると、民主党が多数派となるのは容易でないと予想されている。

 他方、連邦議会下院は435全ての議員が改選を迎える。現在、共和党が239議席、民主党が193議席、欠員が3となっている。連邦下院議員が再選を目指す場合にはその再選率は90%を超える。だが、今の時点で、共和党で引退する人や、上院議員や州知事を目指す人が30名以上存在する。ワシントンポストなどの報道によれば、2016年大統領選挙でトランプがクリントンに対し優位したものの、得票率の差が今回のペンシルヴェニアの選挙区よりも小さい下院の選挙区は119あるという。それに加えて、初当選した大統領が最初に迎える中間選挙では大統領の所属政党が大きく議席を減らす傾向がある。これらのことを考えると、今回の選挙から民主党が適切な教訓を得ることができれば、中間選挙で民主党が多数を奪還する可能性が十分にあると考えられる。

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