西山隆行が読み解くアメリカ社会

2018年2月9日

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 2018年1月に、アメリカのドナルド・トランプ政権は成立一周年を連邦政府が一部閉鎖された状態で迎えた。その閉鎖は3日間で終了し、2月8日までの暫定予算が成立した。2月8日までに正式な予算が成立するか、改めて暫定予算を成立させない限り、またもや政府が閉鎖する事態となった。そして本日、トランプ政権は二度目の政府一部閉鎖を迎えることとなった。

(Photo by Win McNamee/Getty Images)

膨大な政府支出を伴う「妥協策」

 1月の政府閉鎖は、移民問題と予算が絡めて論じられたことが一つの原因となって暫定予算の通過が遅れた。トランプは今回も移民問題を念頭に置きつつ、政府閉鎖が起こっても構わないと発言したりして物議を醸した。しかし、連邦議会上院の二大政党の有力者は、今回は移民問題と予算問題を切り離し、大幅な支出増大措置をとることによって超党派的合意を達成しようと試みた。

 連邦議会は政府債務の悪化に歯止めをかけるため、2011年に10年間の歳出上限を定める予算管理法を成立させている。今回の合意は、2年の間、予算管理法が定める政府支出の枠を超える支出を行い、共和党主流派が望む軍事支出増大と、民主党が望む社会政策関連費用などの非軍事支出増大の両方を実現しようとしている。その合意と併せて、3月23日を期限とする暫定予算も通そうという戦略である。この妥協策は膨大な政府支出を伴うものであり、アメリカの財政赤字が増大することが目に見えているが、今年が中間選挙の年であることを念頭において行われた妥協策だといえるだろう。

 ただし、この措置については、様々な反発がみられた。連邦議会上院では、ケンタッキー州選出の共和党議員でリバタリアン系のランド・ポール議員が、予算削減を掲げて自らが提出した予算案の審議を先に行うべきだと主張し、上院での審議を遅らせた。その結果、昨日までの予想に反し、連邦議会上院の審議が止まってしまったため政府がまたもや一時閉鎖されることとなったのである。

 仮に上述の妥協案が連邦議会上院を通過したとしても、連邦議会下院でも反発がみられている。民主党側には、今回の予算問題と移民問題を切り離すことに対して不満を抱く人々がおり、ナンシー・ペロシ下院院内総務は政府閉鎖の前日、下院の史上最長の8時間に及ぶ演説を行って議事妨害をしている(議事妨害は連邦議会上院ではどの議員も比較的容易に行うことができるが、下院の場合は、院内総務など党のリーダーについてのみ認める慣習がある)。片や、共和党保守派の中にはポールと同様に政府支出増大を拒否したいと考える人々がおり、上院を通過した案を下院でも通過させるのは至難の業であった。

 先月の論稿で記したとおり、予算関連法案を例えば上院で通過させるためには上院議員100名中60名以上の賛成を得る必要がある。今日、議会上院は共和党が51議席、民主党系が49議席を占める状態であるため、予算関連法案を通過させるためには超党派的な合意を形成する必要がある。連邦下院の場合は共和党が多数を占めているが、共和党議員の中に意見の対立を抱えており、党指導部が方針を示したとしても一枚岩的にまとまるわけではない。

 このように、現在のアメリカ政界では、民主党と共和党の対立が激化しているのに加えて、二大政党が共に激しい内部対立を抱えているため、議会での合意形成が非常に難しい状態にある。

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